見出し画像

Vol.2 人間関係の変化が組織を変え、業績を好転させた。伴走型のコンサルと共に、2年で受け身体質から脱却

 株式会社U-NEXUS(ユーネクサス)代表取締役社長の上野敏良と、長野市の老舗の看板制作会社「株式会社アドイシグロ」代表取締役社長・石黒ちとせに聞くインタビューシリーズの第2回。経営者との対談記事を3回に分けてお届けし、4回目に営業部へのインタビュー記事を紹介していきます。

■社員の持つアートの才能を埋もれさせない、人を生かす経営をしたい

―アドイシグロの印象は、客観的に見てどういう状況でしたか?

上野:
 業績に困っている状況があって、まず何が原因かを掘り下げようとヒヤリングしました。僕はヒヤリングシートに基づいて、会社の現状、良いところ、課題、社長が目指していきたいところ、を必ずヒヤリングします。

 先代の時の風土であった「薄利多売で商売する」といった安売り体質からは脱却したものの、高付加価値ビジネスへのシフトにご苦労されている印象を持ちました。

 また、アートな才能を持った社員がたくさんいるのに生かしきれてないともおっしゃっていて、こうした社員の才能を生かした経営を通して、社長が目指している高付加価値経営・企画提案型の企業体質への変革が求められていると感じました。

石黒:
 日々の仕事の中で、せっかく持っているアートの能力を無意識に捨ててしまっているので、もっと生かしてほしいのです。

 たとえば、打ち合わせで説明するときには、さっと紙にラフスケッチを描きます。本人たちは誰でもできることだと思っているのですが、それは一般的に見ると特技であり、すごい特殊能力なのです。

―他と比べて強みと思ったところはありますか?

上野:
 経営計画書、経営計画発表会など、数字への意識が高く、管理をきちんとされています。

石黒:
 数字は客観的に業務判断をするための材料なので、社長だけでなく全員に知っていてもらうことは、経営者の義務でもあり社員の権利だととらえています。そこを知らずして仕事で判断をしろと言われてもやりようがありません。
 正確な情報がそろった上で仕事をしてほしいし、数字を見た以上は売上や経費などが心配になるので、これから担当している仕事をどうしていこうかと考え始めることもできます。

上野:
 もう一つはその内容がよりオープンなところです。営業利益、最終利益までは見せない会社もある中で、内訳までしっかりと数字に落とし込んで社員全員にオープンにされています。目標に達していないにしても目標設定をして、数字の土台があり、その管理もできていたので、あとは人を生かすところ、つまり人づくりと組織づくりをしていけばよいというのが見えていました。

株式会社U-NEXUS・代表取締役 上野敏良

■問題(Problem)探しよりもまず、守り続けたいところ(Keep)を認める

―コンサルティングは実際どんな過程を踏んで、どんな効果が出てきましたか?

上野:
 営業責任者からヒヤリングをし、現状把握し始めたのは2020年1月です。
 僕はいつもシンプルに、まずはKPT(けぷと)を聞いていきます。
 「K」は上手くいっていて Keep したいところ。「P」は問題(Problem)で、「T」はトライ(Try)したいことですが、出てくるのは「P」ばかりで「K」が全く出てきませんでした。

 代表的な課題は、営業の結果がなかなか数字につながらないことでした。一番は人間関係の問題で、アドイシグロさんのように製造と販売の両機能を持っている会社にはよくあることです。

 そこで部門長会議にも入らせていただき、目標設定をしてどう達成していくのか、アクションプランを見せてもらったり、各部門長がどういう問題意識を持っているかをじっくりとヒヤリングさせてもらいました。

石黒:
 社長の私にとっての一番の課題は、私の持つ危機感を、実はみんなは感じていないことでした。

 それがコロナ禍になったことで、全員が必然的に危機感を感じ、これからどうしていこうかと自発的に考えるようになりました。そうしてみんなの意識を引き出して形にしていく中で生まれたのがヒットした、コロナ飛沫防止パーテーション「マウンテンマウンテン」です。

 その機運を作れたのは、上野さんの力が大きいです。営業部が中心になって積極的に提案し、アイデア出してくれそうな制作メンバーを一緒に巻き込んで、出てきたアイデアを形にしたのです。

 「一緒にやろうよ」と営業メンバーが、他の社員に言える気持ちになったのは、会議の中で上野さんがそんなスタンスを引き出してくれたから。コンサルタントからただ営業の仕方を教わるのではなく、自ら考えるプロセスに伴走してくれる、このやり方が良かったのだと思います。

株式会社アドイシグロ・代表取締役 石黒ちとせ

―上野さんが取り入れているコンサルティングの手法があれば教えてください。

上野:
 一番大事にしているのは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する「組織の成功循環モデル」の考え方です。

 売上を上げる、利益を出す、顧客満足度を上げるなどの欲しい結果を得るためには、まず社内やお客様など、人との「関係の質」を高めます。すると「思考の質」が高まり、前向きになります。前向きになると「行動の質」が高まり、行動の質が高まると「結果の質」が高まるというモデルです。

 このサイクルをしっかり回すために、まずはしっかりと関係の質を良くして組織の土台をつくるというのが僕のベースの考え方です。お客様と対話して、組織の中の人間関係の質を高め、思考の質を高めていきます。

―人間関係の質を高めるための秘訣はありますか?

上野:
 KPT(けぷと)をシンプルに回します。まずは上手くいっていることをしっかり共有することが大事です。

 現状への否定から入るのではなく、上手くいっていることをお互い認識し合いながらも、問題は問題として逃げずに向き合っていく。その中で大事なのは優先順位で、重要かつ緊急度の高いものにまず取り掛かる。そんな風に皆さんの思考を整理整頓して可視化していくのが僕の役割です。

 そして意思決定のプロセスに、社員一人一人に一緒に参画してもらうこと。そうすることで会社の課題が自分ごとになります。

取材日/2023年8月25日
場所/株式会社アドイシグロ 
写真/清水隆史(ナノグラフィカ)
執筆/松井明子
編集/寺澤順子(ソーシャルデザインセンター) 

>>Vol.3へ続く

#中小企業 #後継社長 #価値創造 #アトツギ支援 #自律型組織 #自走型組織 #フレームワーク #ファシリテーター #チームづくり
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?