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令和日本紀行 -14: 越前国の旅
今まで訪れた日本国内の地域の地理・歴史について、記録しています。今回は、北陸新幹線の敦賀延伸で沸く現在の福井県と、NHK大河ドラマ「光る君」のヒロインが実父とともに赴任中の越前国について書きます。
昨年秋、北陸フリーきっぷで、2泊3日で北陸三県を周遊した。最後に訪れた敦賀市では、気比の松原、氣比神社、金ヶ崎城跡等を散策した。
良港であった敦賀は、古代より大陸との交流の窓口であった。「光る君」のヒロインが初めて宋の人々と接した「松原客館」は、気比の松原付近に存在していたと推測される。
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越前国は、7世紀後半に、現在の北陸地方にあった広大な高志国(こしのくに)が3つに分割されたときに、命名された。
「日本書紀」によると、大和朝廷の基盤を作った継体天皇は、幼い頃にこの地に移り、北陸の統治者となっていたが、暴君であった武烈天皇の後継者として、ヤマト政権の立て直しを図った。朝廷にとって祖先のゆかりがある越前国は、日本海の地政学的な要所でもあり、「光る君」でも藤原為時が国主への抜擢に欣喜したように、大国として位置づけられていた。
中世になって、越前朝倉氏が勃興する。朝倉氏は、足利氏の一族である斯波氏に仕えていたが、越前国に定着して守護代となっだ。戦国時代後期に繁栄し、本拠とする一乗谷城と城下町(福井市街の東南約10km)に京風の文化都市を構築した。1973年、一乗谷朝倉氏遺跡から174枚の将棋の駒が発掘された際、現代では使われない醉象(すいぞう)という駒が一枚発見された。醉象と太子(醉象の成駒)を使う小将棋が指されていたらしい。
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戦国時代末期の戦いで有名な「金ヶ崎の退き口」は、現在の敦賀市街の北側に位置した金ヶ崎城から、織田信長が全速力で退却した戦いである。昨年のNHK大河ドラマ「どうする家康」では、松本潤扮する徳川家康がコミカルな演技を見せていた。
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1912年(明治45年)、日本政府は、金ヶ崎駅(敦賀)を拠点とした欧亜国際連絡列車を運行させた。シベリア鉄道の発着地であるウラジオストクと敦賀を結ぶ鉄道連絡船を通じて、一枚の切符で新橋駅(東京)からベルリンまでの渡航を可能としたのだ。
しかし、それまでの道のりは、長浜と敦賀の間のトンネル建設など難工事続きであり、多くの労苦が伴ったことは、あまり知られていない。
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次に、敦賀観光において是非立ち寄りたい場所は、「人道の港 敦賀ムゼウム」である。
ナチスドイツからの迫害を逃れたユダヤ難民を受け入れた際の写真や、第一次世界大戦中にシベリヤや満州に送られたポーランド人の政治犯の子ども達(ポーランド孤児)の日記などが展示されている。日本人が、不幸な境遇の外国人を見捨てず、厚くもてなしたことに感動を覚える。
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さて、敦賀のグルメと言えば、敦賀ヨーロッパ軒のソースカツ丼♪
大きさが半端ではないので満腹感に満たされる。この前、調べたところ、福井市内のヨーロッパ軒から暖簾分けされたグループらしい。今度は、福井市内でもトライしたい!
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福井観光の目玉は福井県立恐竜博物館。福井駅から、えちぜん鉄道で行くことができる。永平寺とセットで回ればよいだろう。
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北陸新幹線の敦賀延伸により、福井県への観光客数は大幅に増えるだろう。
本年10月19、20日、将棋竜王戦第2局があわら温泉で開催される。読売新聞広告によると、杉本達治福井県知事の肝煎りのようだ。
藤井聡太竜王に挑戦する棋士は、決勝トーナメントを勝ち上がった者となる。醉象や太子という古代の駒が活躍した朝倉将棋を勉強してみてはどうか?新しい発想が出てくるかもしれない!
日本の古代、中世、近代において、日本の外交と経済を支えたこの地域について、観光促進、未来に向けたデジタル活用などを絡めた地域振興戦略を期待したい。