音楽家と歴史・社会24: 金子三勇士と行く!〜ロマン派の旅
主にクラシック音楽に係る歴史、社会等について、書いています。
今回は、12月10日、金沢市アートホールで開催された「金子三勇士と行く!〜クラシック音楽のタイムトラベル」で感じたことを中心にして、ロマン派音楽について書きます。写真は、楽屋での金子三勇士氏と私のツーショットです。
マガジン「音楽家と歴史・社会」で何度かご紹介させて頂いた金子三勇士氏は、私の仕事において、とても重要な「民間デジタルID」を推進する某実業家の御子息である。
このような縁に加えて、私が旅行や帰省する先で、偶然リサイタルされていることがあり、今回は金沢市で奇跡的なリアル対面をさせていただいた。
しかも、本日の演目は、私の最も好きなロマン派音楽の以下の作品。
・ショパン「バラード第1番」
・シューベルト「アヴェ・マリア」
・シューベルト「鱒」
・シューベルト「魔王」
・リスト「死の舞踏(題名のない音楽会バージョン」
・ショパン「ノクターン(遺作)」
・シューマン「献呈」
・リスト「愛の夢」
・リスト「ラ・カンパネラ」 他
これらのうち、「アヴェ・マリア」「鱒」「魔王」「献呈」「愛の夢」は、特別出演のカウンターテナーの彌勒忠史氏による歌唱と、金子三勇士氏のピアノ・ソロを続けて演奏するという、とても斬新なものだった。
演奏の合間における金子氏と彌勒氏の会話の中で、ロマン派音楽の成り立ちに加えて、バロック以前の教会音楽でなぜ男性によるカウンターテナーが誕生したかについての解説がなされ、とても興味深いリサイタルとなった。
金子氏が最初にソロ演奏したショパン「バラード第1番ト短調」は、序奏をあえてゆっくりのテンポとして、徐々に盛り上げていくスタイル。コーダは超絶技巧だが、フランツ・リスト風にはしない。ちなみに、私が演奏すると、焦って最初から速くなってしまう。とても参考になった。
彌勒氏が歌ったリスト「歌曲・愛の夢第3番」は、私は初めて聴いた。中間部が、直後の金子氏のピアノ編曲版とかなり異なる。また、最後の聞かせどころの「アヴェ・マリア」の旋律を隠しこんだフレーズでは、既に歌唱が終わっていて、ピアノのみによるエンディング。私は、後部の座席にいたが、金子氏のペダルの丁寧な踏み方をしっかりと見た。
最後に、金子氏によるフランツ・リストの3つの偉業の紹介。
①ピアノのリサイタルという興行スタイルの確立
②ソリストだけでなくて、伴奏者他関係者が一緒になって巡業するコンサートツアーの開始
③ピアノフォルテの性能を向上させるための職人達によるコンペティションを実現したこと
ロマン派音楽の総仕上げを行ったフランツ・リストへの尊敬の念を感じさせる金子氏の名解説であった。
「第3回~近代から現代への扉~」は、同じく金沢市アートセンタにて、来年3月20日(祝日)に開演される予定。金子三勇士がどのような解釈と演奏を行うか、楽しみである。