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あの頃のままだった
お盆休み。夫が寝かしつけを担当し、家事を終えてようやく自由時間!「百年の孤独の続きを!」と思い、ソファに腰掛けると、
「カサリ。」
という絶対に虫の足音。
はっとあたりを見渡すと緑のカメムシが壁の上の方にいた。
「あ、カメムシね!虫取り網ででもとってやろうかしら。」と余裕綽綽に思う。
しかしいざ工程を想像すると、虫取り網で捕獲した後にどうやって外に出すのだろう。虫取り網ごと外にほっぽり出すしかできそうもない。
虫取り網での捕獲は諦めた。
うちの家族は母が大の虫嫌いで、私を含めた三姉妹全員、虫に恐怖心があった。父は虫取り少年の過去をもつが、私が幼い頃から海外出張が多く、ほとんど家にいなかった。父不在で家に虫が出た時は大騒ぎしていた。
そんな私たちが虫に対処する方法は、閉じ込めることだった。
スズメバチが入ってきた時は母のタンスに閉じ込めたし、Gが出た時は大きな箱で閉じ込めてとても重たい重しを載せた(でもいなくなっていた)。
私は夜中のカメムシに対して、紙コップなどで閉じ込めてテープをはって閉じ込めた。
日々虫と暮らしていて、かなり恐怖心が薄れてきたと思っていたが、いざ1人で対峙すると何もできなかった。
私は妹とのじゃんけんに負けて、恐怖で叫びながら箱で虫を閉じ込めようとしていた頃のままだった。