ビジネスモデルへの違和感は何か?
事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「デジタルB2Bマーケティング第9回」
■ビジネスモデルで考えることに違和感を覚えるのはなぜか
ビジネスモデルの重要性を説き、実際に設計しても、ビジネスの現場には理解されないことが多い。それは、そもそもB2Bビジネスの現場においてビジネスモデルという概念がないからだ。多くのB2Bビジネスの現場は、自社の製品・サービスと顧客と2社間の閉じた関係を前提に議論している。実態は異なるが、事業が成熟してくると大きな変化もなく、狭い範囲での「固定化」した構造が出来上がる。品質管理などにより不確実性を徹底排除して「安定」し様態をつくり、その中で生産性をあげていく「モノづくりの世界」である。きわめて正当なビジネスのやり方だ。しかしそうした成熟、安定、固定したビジネスは、ソフトウエア、インターネット、そこから得られる、情報、データなどで武装化した異業種のビジネスモデルによって破壊され始めることが多い。実際狙われてもいる。
モノづくりの概念とネットなどを使ったビジネスモデルの概念とは全く異なる。モノづくりは、もののフィジカルな面を実態してとらえているが、
ビジネスモデルでは、情報やデータといった点をつなぎ合わせた大きな範囲でのシステムが対象だ。ビジネスモデルは、モノづくりに比べ、かなり抽象度が高く、対象とする範囲も広い。また外部の変動を積極的に吸収する仕組みがある。
同じ会社、組織、個人が近も2つの要素を同時に認識するのは現実的には極めて難しい。ものづくりでは、企業の経営資源をモノづくりに集中する。ビジネスモデルに投入する資源はそれほどない。
モノづくりに集中している人や組織に、ビジネスモデルの重要性を説いてもなかなか伝わらないのは、成果の対象とするものの概念に大きな違いがあるからだ。
■ビジネスモデルとは常に生成変化することを前提としている
モノづくりの概念は、原材料、生産プロセス、在庫などかかわる範囲を限定し、そのすべての要素を固定化し、生産性を最大化させる。しかしビジネスモデルという概念は、かかわる人、組織の変化を前提にしたオープンで生成変化するダイナミックなシステムである。システムというよりネットワークという言葉の方が解りやすいかもしれない。わかりやすいのはグーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)のなどのAGFAのビジネスモデルは、それぞれ独自のプラットフォームがあり、常に企業や顧客の変化を取り込み、学習し変化している。
■ビジネスモデルから実態を推測してアクションする
GAFAのような企業が入手しているものは、お金の流れ、モノの流れ、情報やノウハウの流れなどの点情報である。しかしその膨大な点情報を関係づけていくと、一顧客の実態、地域、年齢、嗜好などのセグメントでの実態、さらには社会全体での実態までも把握でき、政治、経済、人の生活までにも影響を与える存在となりうるのだ。
単に膨大な点情報を持ってるから競争優位なのではなく、こそからものごとの「実態」を推測し、いち早く自社のビジネスを仕掛け、アクションするから強いのだ。ただしこの場合の実態とは、モノやサービスの実態ではなく、エンドユーザーの経験面での実態である。しかもそれは広範囲に及ぶ。その経験面での実態情報を、企業広告主、アプリベンダー、出品者に提供してそのフィーを稼いでいる。
■B2Bの企業はビジネスモデル戦略を実現できないのか?
GAFAのほかに、Baidu(百度、バイドゥ)・Alibaba(アリババグループ)・Tencent(テンセント)・Huawei(ファーウェイ)の総称であるBATHも入れるとすでにビジネスモデルは米中両国の企業に支配されたように思われるし、GAFA,BATHだけなく大小さまざまなネットビジネスも国内外に多数存在していることから、日本のB2Bビジネスが入る余地はないようにも感じる。
しかしそうとも言い切れない。なぜなら最も重要なエンドユーザーの経験価値」は、彼らのようなネットビジネスがもつビジネスモデルではなく、あくまでも「製品・サービス」が源流なのだ。その製品・サービスの価値を決定づけるのは、B2Bビジネスの「製品・サービスの要素」であることは間違いない。その個別の要素が、ビジネスモデルを創発し、ビジネスモデルが生み出した顧客経験仮がその個別要素にフィードバックされる仕組みをつくるのだ。
不足しているのは、B2Bビジネス、その先の製品・サービスビジネスが生み出している顧客経験価値を把握、分析し、そこから新たなものを創造することではないか。そういった意味では、B2Bにもビジネスモデルは必須であり、過去の思考を変え、ビジネスモデルに投資することが求められている。