事業コンセプトを評価する
事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「成功する事業コンセプトの作り方コース第6回」
■コンセプト評価の4つの視点とは
事業コンセプトの段階でテストを行うべきであると前に述べたが、まだ概念でしかない事業コンセプトは、どのような視点で評価すべきなのだろうか。事業コンセプトをより良いものにしていく上でも、評価視点を知っておくことは大変重要である。事業コンセプトの評価視点には大きく4つのカテゴリーがある。(図参照)
1つは、事業の「成長性」。事業の成長性は、市場規模や市場の成長性をベースに考える。しかし、前にもでも述べたが、相対的に市場規模が大きいことや市場の成長性が高いことが、事業の成長性につながるとは言えない。参入する市場環境において、考えられている事業コンセプトそのものの成長
性が高いかどうかを評価しなければならない。縮小傾向の市場であっても、ターゲツト顧客やニーズの捉え方によっては、成長性の高い事業になり得る。たとえば2014年にニューヨークで5人で立ち上げた寝具用マットレス販売のCasperは、これまで成熟、衰退市場と考えられていた同市場で、顧客に快適な睡眠を提供するという独自の世界観をダイレクトに伝え、オンライン販売に乗り出し参入3年目で日本円で400億円の売上を上げた。一方、たとえ成長市場であっても競争が厳しければ、事業としては成長が難しいこともある。電気自動車市場は、世界的に見ても今後高い成長率なるとかんがえられているが、コスト競争が厳しく事業として成長させるにはかなりのリスクがある。
2つ目に「収益性」が挙げられる。収益性が高いかどうかは、商品・サービスに独自性があり、価格競争を回避できるものであるかどうかや、商品サービスをつくり出すための生産性が高いか、コストカが高いかどうかが問われる。さらに、保有している設備などの資産でどれだけの売上げや利益を生み出せるかなどが問われる。
3つ目は、事業コンセプトの「実現性」である。いくら良いコンセプトであっても、実現性が低ければ事業の魅力があるとは言い難い。実現性の視点としては、事業競争上必要なコアの強みや能力があるか、事業成功要因を押さえることができるかなどが評価される。また、投資した資金が何年で回収できるかといったことや、損益分岐点到達期間の長さなども評価すべき項目である。
4つ目は、事業コンセプトと、掲げている理念、使命感、問題意識、ビジョンといったものとの「整合性」。もし、企業内での社内ベンチャーや新規事業開発であった場合、経営理念、経営戦略など、上位組織の戦略との整合性も評価の対象となる。
■コンセプト・レベルでの評価はどこまで可能か
事業コンセプトの段階では、詳細な調査計画がまだ実施されていないことがほとんどである。そういった状況の中で、どのような方法で、どこまで評価できるのかを疑間に思う方も多いかもしれない。コンセプト段階での評価は、事業に関する情報が少ない状況で行わなければならないため、おの
ずから″大まか″で″定性的″なものになる。具体的には、図のようなマトリクスを作成し、各項目に一から五段階までの定性的な評価を行うといった方法をとる。その際、評価の参考情報となるのが、先に挙げた事業コンセプトのヒアリングで得た情報である。定性評価であるが故に、複数の人に評価してもらうのが効果的であろう。
「情報も得にくく、詳細まで企画できていない事業コンセプト段階では、その評価は難しい。実施しても意味がないのでは?」という声もあるかもしれない。しかし先述のように、事業戦略計画の成否はこの事業コンセプトによるところが大きい。事業コンセプトとは、それ自身が仮説となり、その検証として事業戦略企画、計数計画策定といった一連のプロセスに繋がる、まさに事業戦略計画のファーストステップだからである。