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事業戦略大学(教員1名、生徒無限大) 第8回 戦う領域(事業ドメイン)を吟味する「考え抜くための戦略フレームワーク入門」


自分ごととして考えてみましょう。それが戦略企画力を身につける最も効果的な学習方法です。

設問1:あなたもしくはあなたの所属する企業の事業領域はどう定義づけられますか?

設問2:その事業領域は、自分、自社に有利で、競合に勝てる範囲になっていますか?

設問3:勝てる事業領域を創り出したり、シフトするために具体的にどのような戦略をとっていますか?


■欧米リーディング企業なみの成長性を確保するためには

日本が比較的競争力のあると言われている化学産業においても、ドイツBASF、米国3Mなどと比較すると、日本企業は成長性、利益率はじめどの経営指標も大きく見劣りする。BASF、3Mともに、コア技術を重視しつつ、事業ポートフォリオを厳格に管理し、必要とあらばM&Aを断行し、事業を入れ替え、成長事業分野をシフトさせている。日本企業との差は年々拡大していっている。同じ様な構図が、製薬業界や食品業界でも起こっている。

その大胆なM&A戦略を支えるために、欧米の優良企業は、ファイナンステクノロジー、人事制度変革、ポストM&Aのためのリーダーシップ育成に莫大な投資を行っている。

日本企業も、人事制度改革や設備投資抑制など大小のさまざまなコストダウンと、いくつかの海外M&Aは行なってきたものの、欧米のリーディング企業を超えるような成長には至っていない。

環境が変化する中で継続して利益の最大化と資産の最適化を達成するには、事業領域の変革を行う必要がある。つまり、成長領域に資源を重点的に配分し、非成長分野は切り離すか撤退するといった事業の新陳代謝を進めなければならない。欧米トップ企業なみの成長率を狙うとなれば、成長領域に投資するとともに、撤退を覚悟する事業も当然出てくる。日本の企業文化には、手塩にかけて育てた事業は自分たちの“家”や“文化”と考える傾向が強く、資金に換えるために売却できる資産という感覚はまだまだ薄い。どうしても撤退イコール敗戦をイメージしてしまいがちである。

そういった日本企業の考え方も事業の継続性という点ではあながち間違いとは言えない。しかし、ほとんどの業界で競争がグローバル化している中、欧米のリーディング企業のような成長意欲の高い企業が競争相手となると、成長戦略に関して効果的な手を打たなければ、事業の継続さえも難しくなる可能性がある。そこで必要とされる戦略が事業ドメイン戦略である。それは利益の最大化と最適な資産構成を目指し、自社の事業領域を定義し直し、成長分野を切り開く戦略である。

■独自の事業領域で高い利益を上げる戦略

事業ドメインとは、事業のあるべき姿の一つである。この事業のあるべき姿を「戦略ビジョン」と呼ぶ。事業ドメイン戦略の目的は、他社が参入しにくい独自の事業領域を構築し、市場をリードし続けることで、高い利益を上げることである。地理的条件、国などによる規制、文化特性などによる枠組みの古いタイプの事業ドメインは、今日のようなグローバル化された経済においては、むしろ参入のターゲットとなりやすい。

一方、顧客との強い結びつき、高い顧客サービス力、独自の技術開発力、製品イノベーションのスピード、独自のブランド、文化などを基盤にした事業ドメインは、新規参入者にはそう簡単に崩せない。事業ドメイン戦略とは、このような他社が容易には入り込めない障壁をつくってしまうことである。

事業ドメイン戦略には最終的に、ドメインの拡張軸と呼ばれる二つの軸の定義づけがなされなければならない。

その三つの軸とは、「顧客は誰か」「その顧客にどのような機能を提供するのか」「どのような提供形態・方法をとるのか」である。

事業ドメインの企画検討には、いくつかのアプローチ方法がある。それぞれ次元の異なるものではあるが、事業のステージや状況に応じて必要と思われる方法を活用する。

①アンゾフの成長ベクトルを活用した検討

製品と市場を縦横の二つの軸にとり、それぞれを既存と新規に分けてつくった四象限のマトリクスで多角化戦略の方向性を検討する方法。四つの象限それぞれについて、ドメイン拡大の難易度は異なる。具体的なドメインを検討するというよりも、まさに成長の方向性(ベクトル)の方針を判断するためのツールである。極めて単純なツールではあるが、企業の中には、この四象限の参入難易度の違いを考えず、新規事業を企画・推進してしまっている企業も少なくない。

②バリューチエーンを活用した検討

業界内または関連する業界も含めた大きな範囲でのバリューチェーンでドメインを検討する方法。自社を起点にしたバリューチェーンの川上や川下への拡大、同じドメインでのエリアの拡張などが考えられる。最近は、資本提携と業務提携を駆使したアライアンスや、情報技術の活用によるバリューチェーン上のドメイン拡大が盛んである。業界構造分析の結果を活用する。

③事業ポートフォリオを活用した検討

事業ポートフォリオでは、縦軸に利益率、横軸に市場の成長性もしくは相対的シェアなどをとり、現在の事業をマトリクス上に位置づける。バリューチェーンの視点や技術開発面、業務プロセス面、販売チャネル面などの事業間のシナジーを考えながら、資産としての事業の最適な組み合わせと事業領域を企画する。


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