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高性能住宅って元が取れるかどうかで考えること自体が・・・

かかり増し分をランニングコストの削減分で割って回収年を計算する

高気密高断熱住宅のメリットデメリット。
誰しも考え、試算したことがあると思います。

普通の家に比べて高気密高断熱住宅は何処がよいのか、どのくらい良いのか、費用対効果はどのくらいか、何年で元が取れるか・・・

この種の試算の場合、通常の家(等級4でしょう)から高気密高断熱住宅にする場合の断熱材や窓について、そのかかり増し分を算出します。

例えば、壁の断熱材をグラスウールから吹付けウレタンにする、や、窓をペアガラスからトリプルガラスにする、などです。

次に、普通の家と高性能な家(等級6にします)の年間のランニングコストを出します。

その後、かかり増し分をランニングコストの差額で割ることによってペイバック年数(元が取れるまでの年数)を算出します。かかり増し分が80万円でランニングコストの差が2万円だったとしたら、40年!!

太陽光発電でも同じような試算を目にします。初期費用が150万円、売電利益が10万円だった場合、15年で元が取れます!

いつからか、この試算方法が当たり前になっていて、そのことに今更ながら違和感を覚えまして今回の投稿と相成りました。

実はこのペイバック試算、国土交通省の資料にも同じことが書いてあり、住宅業界でより良い仕様を検討する際、それは初期投資額と回収期間で語られるようになっている気がします。

35年って・・・

今日もどこかでこんな笑い話なのか本気なのかわからない会話が・・・。

工務店社長  「いいのはわかるんだけど、元取れんの?」

営業さん   「社長大丈夫です。40年で回収できます!」

かかり増し分という表現の違和感

どのくらいお得かを考えるのは当たり前ですし、それを計算しようという意図もわかります。僕が違和感を覚えるのは「かかり増し」「追加分」のところです。

そもそもなぜ、等級4と等級6を比べるのか、なぜ省エネ基準に適合させる(上から言わないでよ)ために必要となる「かかり増し」「追加的コスト」という表現になっているのか。

それは等級6やG2が「特別」だからだと考えます。等級4が「普通」で等級6が「特別」だからかかり増しであり、差額という表現になります。

これがもし最初から等級6が普通の仕様であり、普通の住宅であったならこんな試算をする必要ないですね。

「国の基準が等級6だから、それで建ててください。」ってだけです。必要な仕様を満たすのに必要なコストをかけ、対価を払う、それだけです。

等級6やG2が「特別」になってしまったのは、僕を含めた住宅業界が今まで長い間サボっていたからに他ならないと考えます。

長い間ずーっと等級4を「国の最高レベルの断熱です。」と言ってはばからない人、そうか最高かとそのまま受け止める人。それで問題ないですと放置してきた人。

ただ、今それを言っても始まりませんし、大事なのは、「ではどうするか」です。

ピンチをチャンスに

試算をする前からわかっていますし、住宅会社さんにお伝えして落胆されることも数知れずなのですが、ランニングコストの差額(等級4と6)は良くてせいぜい2万前後です。到底回収できるようなレベルにないことがほとんどです。

費用対効果や初期投資とペイバックのロジックで考える範疇にないと受け止めるべきです。

HEAT20でも言っている通り、EB(エナジーベネフィット=高性能化によって得られる直接的な便益(光熱費))だけでは高性能住宅の動機づけには弱く、NEB(ノンエナジーベネフィット=それ以外の便益、健康、環境など)と両方を伝えなければ消費者は動かない・・・。

つまり、目に見える価値だけではなく、目には見えない価値も合わせて伝えなければならないということです。

これ、とらえようによったらチャンスです。断熱や窓はやっぱりコストがかかりますし、掛けたらかけただけ良くなります。一方でNEBは定量化できないわけです。どれだけ心地良いかを数値で表すのは難しいですね。(PMV指標は別として)

でも目に見えない抽象的な心地良さや快適性は工夫次第でどのようにも表現できますし、それぞれ独自の強みをそこに盛り付けたりして、オリジナルの付加価値としてお伝えするとき、他のどこにも真似できない価値の伝え方ができるのではないでしょうか。

価値をどう伝えるか

NEBの主なものは、快適性・健康・環境です。

それぞれの具体例を見てみます。どうしたらその良さが伝わるかをこれまで散々考えてきました。みんなと一味違う付加価値の伝え方をするには、どこかで聞いたことのある表現だけでは弱いということに気付いて欲しい。差別化とはそういうことです。

一例として注意点も含めご参考まで書いてみます。

◎快適性を付加価値としてどのように伝えるか。

・自然素材をふんだんに使った心地良さ
→良く見るコピーですが、まずは新建材や合成樹脂やウレタンと自然素材の違いの理解が前提にないと弱いです。ユーザーがその知識を持っているかどうかで話のスタート位置は変わります。もし自然素材の良さを理解してほしいなら、「ウレタン被膜とその弊害とは」から始めないと伝わらないかも。

・外と内とのつながりが心地良い
→これも設計者が言いたいことNo1かもしれません。ウッドデッキと一体になったリビング、グランピングみたいな空間、外のような中のような・・・etc 出来上がってみたら断熱気密の境界があいまいだったり、吐き出し窓を多用することで性能が落ちてしまったりということもよくあります。断熱気密を念頭に置かない開放はリスキーです。断熱設計的なセオリーを抑えた上で表現するならば、「閉じてよし、開いてよし」(引用:「心地よさのものさし 伊礼智著より)でしょうか。住まい手がその時々の気持ちで外部との関係をつなげたり閉じたりする、選択するのは住まい手です。

・どこに行っても温度が一定で
→その通りで、高気密高断熱で冷暖房と換気もバランスよく計画されることの大きなメリットのひとつですね。建物の面積いっぱいに有効利用ができ、無駄なく活用できる。家のどこにいても快適である良さがあります。

一方で等級6やG2オーバーの住宅なら、温度差は許容できることにも目を向けてほしいのです。冬に躯体が暖まっている時に給気による冷気が入ったとしても、そこまで体感温度を下げることはなく、多少の温度ムラはあったとしても、それが不快と思えるようなことにはならないのです。中途半端な断熱だと給気流入の影響が相対的に大きくなってしまいますが、より高レベルな住宅の場合、そうはなりません。・・・ということも合わせて伝えていますか?

<後篇に続く>


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