改正戸籍法と漢字教育の話

　氏名に読み仮名を必須とする法律案については、以前に以下の記事で触れたことがある。

　参議院本会議での可決成立をうけ、いくつかの反応があった。

これで、僕の父親は鴻上（こうかみ）と名乗っていたけれど、父親の弟、おじさんは（こうがみ）の名乗っていたようなことが、なくなりますね。日本語は視覚偏重なので、書き文字にはうるさくても、読み方はじつにおおらかでした。良い悪いではなく、文化が一つ変わりますね。 https://t.co/G0s1hECtwx

— 鴻上尚史 (@KOKAMIShoji) June 3, 2023

例の戸籍法改正（人名に読みを付ける）が成立したようだ。読み仮名に制限が加わるという話であるが、この『日本語学』の特集号では、それに関する学術的検討を行い、「命名文化」を尊重し、制限の運用が緩やかなものであることが望ましいことを論じている。この問題に関心のある方にお薦めしたい。 https://t.co/f9XkijO8oo

— yhkondo (@yhkondo) June 2, 2023

　わたしもこれと同じで、命名文化の尊重という意見に賛同する立場である。この読み方は一般的かどうかということが、権力によって一方的に決められることではない。言語の機能の一つとしてある「創造機能」（既存の意味、読み、表記などを基礎にして、みずから新しい意味、読み、表記をつくり出す機能が言語に内蔵されているということ）を、互いに尊重して守り育てる制度となってほしい。

　改正戸籍法の話は、今後の国語教育、漢字教育に影響を与えずにはおかないだろう。何かに名前をつけることは一種の「書くこと」の教育でもある。これからの漢字漢語文化をどのように育てていくか。今後の動きを注視していきたい。