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学生講師が信頼関係を構築するための方法論

ここ数日、僕のX(旧Twitter)に、学生講師なんて知識量で予備校講師に及ばないからハズレばかりというような発言でプチ炎上したポストが流れてくるのですが、仕事柄(見たくも無いのに)さまざまな反応が回ってきて(笑)、それで学生講師の価値創出についての持論と方法論があったので、今回はその辺についてまとめたいと思います。

学生講師の創出価値を定義する

そもそも学生講師の価値はなんなのか?
先に挙げた発信と反応に関して、この定義が曖昧なために賛否が入り乱れていると言うのが僕の印象でした。
僕は指導に関して子供たちの勉強特性に応じて、縦軸に帰納(習うより慣れる)⇔演繹(納得してから動く)/横軸にミラーリング(真似る・盗む)⇔コーチング(手取り足取り教えてもらう)を置いて4種類に分けて考えることにしています。

で、学生講師さんたちの価値が最も発揮されるのは第四象限にある帰納×コーチングを求めるご家庭や生徒さんであると言うのが僕の持論。
ここをターゲットにしている塾さんが学生講師×独自のシステムで構成される塾のスタイルで、それを予備校のニーズにマッチして成功した学生さんが、自分のニーズの範囲で、主語を広めて「学生講師にはハズレが多い」と言ってしまうから炎上したのだろうと思います。

それぞれのセグメントによってニーズがまるで違うので、以下の話は上図で言うところの第四象限を前提にして話していきたいと思います。

学生講師の価値は何か?

教室から見た学生講師の価値はなんなのでしょう?
これは僕の失敗談なのですが、自分が学生講師の時は2年目から個別/集団合わせてフルでコマが埋まりはじめ、「指導力があるから」などとイキっていました。
でも、実際アンケートを見てみると、多くの高評価の理由は「親近感」。
指導力ではなく自分のキャラクターに顧客がついているということが嫌で仕方がなく、そこからキャラクターを徹底的に消す事を意識したのですが、その瞬間に一気に子供たちの成績は下がり、人気はなくなったことを思い出します。
結局子供たちは業務で忙しい社員さんより年齢でも仕事量でも近くの立場にいる僕との関係性で勉強をしてくれて、そこに(今となっては最低限に届く程度ですが)指導力が備わっているから伸びていたと言う事を痛感しました。

指導力や知識量、経験値や威厳(?)みたいなものではいわゆる「プロ」には届くはずがありません。
しかし、塾に求めるニーズの中で学生講師が勝てるフィールド、むしろ学生講師だから勝てるフィールドがあり、そこを意識して磨くのがうまくいく秘訣なのだと思います。

指導の第一歩は信頼獲得

実際に学生講師が生徒さんと接する上で必要なのは何かといえば、僕は信頼獲得の意識だと思っています。
もちろん指導を求めて塾に来るわけですが、特に勉強が苦手な生徒さんほど、「勉強以前」或いは「勉強するという行為そのもの」に心理的ハードルがある場合が少なくありません。
これを解きほぐすことが指導の第一歩で、そのための基本姿勢が、生徒さんとの信頼構築だと思うのです。

よく、自称「場を盛り上げるのが上手い」という方がいますが、彼らのいう「盛り上げる」は自分が中心となって場を回す行為で、信頼関係を構築するのとは違います。
そういうスタンスでいきなり子供たちの輪に入っていっても受け入れて貰えないし、そこで強引に場を回して盛り上がったとして、それは子供たちが心を開いたのではなく「付き合わされてエネルギーを浪費した」というだけ。
こうならないためにも、信頼関係を構築して場が温かくなるような接し方をする必要があります。

信頼関係の獲得の方法論【意識編】

ここからは信頼関係を構築するために僕が意識している方法論をまとめたいと思います。
僕は初対面の生徒さんと接する際は、「向こうは僕らに心を開く義理も義務もない」という前提で向き合います。
そもそも赤の他人で、知らない場に連れてこられた中で、いきなり心を開けなんていうのが厚かましく、まずはここはあなたの居場所であると認識させてあげる事、そしてこの人になら心を開いていいと気心を許してもらえる事。
この2点を前提にする事が大事だと思うのです。

具体的なスタンスとして僕が実践しているのは、①いきなり距離感を詰めすぎない事を意識しつつ②「場」としての居心地の良さを実感してもらう事、③この人に自分のことを話したいと思ってもらう事を達成するという形です。

これを達成した上で信頼関係を積み上げる。
そしてその積み上げた信頼残高をやりくりしつつ、勉強という負担を少しずつ課し、時に厳しい指摘をし、それでも受け入れてもらい成績という具体的な成果を獲得するというのが、塾講師のバイトの基本的なスタンスであるように思うのです。

信頼関係の獲得の方法論【ノウハウ編】

と、意識面の事を書いたのはいいとして、これだけではただの精神論です。
ここからは学生時代に大失敗をした(笑)僕が、具体的にやっている手順についてまとめたいと思います。

僕はうちの学生さんたちには、生徒さんとの信頼関係の構築を考える際、次の3点を意識するように言っています。

7:3で会話を始めて4:6に持っていく
この人は自分の理解者であると思ってもらう
自分のキャラクターを知ってもらう

これが満たせさえすれば、まあ大きな失敗にはならないかなあという印象です。

7:3で始めた会話を4:6に持っていく方法

それぞれは関連し合っているのですが、いったんあえてバラバラに見ていこうと思います。
まず、「7:3で会話を始めて4:6に持っていく」といものです。
当然ですが、初めて塾に来た生徒さんにとって、そこは未知の環境です。
そこでいきなり自我大爆発で自分語りをしてくれるなんてそうそうありません(笑)
だから、まずはこちらが話の主導権を握らなければなりません。
その基準が7:3の会話だというのが僕の持論です。

ここで大事なのは話の基本は①生徒さんとの文脈の共有である事、②会話のゴールは生徒さんへの質問である事、③やり取りを通して理解を深めようとする事の3点を忘れない事です。
いくら7:3で盛り上げたとしても、それが自分の自信のある爆笑トークだったり、自分語りでは意味がありません。
あくまで目的は7:3の会話をとおして4:6に持っていくこと。
①〜③はそのための手段です。

7:3の会話を4:6に持っていくにはどうしたらいいのか?
その移行のポイントは「知ってほしい」と思ってもらえるかどうかです。
「知ってほしい」と思ってもらうために必要なことが、相手を知るためのコミュニケーションです。

相手を知るためコミュニケーションとは相手の価値観への問いかけこのと。
例えば、今ハマっていること、好きなことを聞いて、「面白そう!」「すごい!」という表面的な興味関心は相手にとってあまり響くものではありません。
ましてそれが初めての環境ならなおさらです。
でも、自分の好きなものの背景にある「どうして好きなのか?」「なぜ好きになったのか?」という価値観の部分に興味を持ち受け止めて、その理由に対して共感する。
これができると初めて受け入れてもらえて、それが4:6の会話になるわけです。

この人は自分の理解者であると思ってもらう方法

受け入れてもいいと思ってもらっても、それだけではそこらの友達と変わりません。
そこから勉強というある種の負荷を課しても許されるには味方であると意識してもらう必要があります。
僕はそれを「この人は自分の理解者であると思ってもらう」ことであると考えます。

自分の理解者であると思ってもらうための方法論としては、先に挙げた「価値観への問いかけ」に対して、自分の観点で言語化することが有効です。
「自分の周りには親身に相談に乗ってくれる友達が多い」と言ってくれるなら「あなたがそうやって接しているからそう言う友達が集まるってことだと思うから羨ましい」みたいな(笑)

価値観に対して自分の観点からきちんと返す(もちろんポジティブなことだけ)と言うやりとりの積み上げが、この人は理解者であると心を開いてもらうことにつながると思うのです。

自分のキャラクターを知ってもらう方法

最後に自分のキャラクターを知ってもらう方法です。
役割上とはいえ[生徒-先生]という上下関係がある以上、どうしても生徒さんにとっては話しかけづらさという心理的な障壁はあるはずです。
その障壁を下げるのがキャラクター。

僕は[キャラクターの構成要素=分かりやすさと隙]だと思っています。
分かりやすさとは「自分はどういう人であるか」というもの。
この人にどういう声掛けをするとどういう反応が返ってくるか。
それがわかると、途端に話しかけるハードルが下がります。
「自分というキャラクターはどういう一貫した反応を返すのか」を意識することが、分かりやすさの向上の第一歩です。

次に「隙」という部分です。
どんなに分かりやすくキャラ立ちしていても、子どもたちにとって付け入る隙が無ければ、やっぱり「話しかけやすい」にはなりません。
どこかに子供たちにとって付け入りやすい隙、負け顔を作るポイントがあることで、一気に親近感が演出できると思うのです。

これは僕が就活の時に模擬授業で言われたことなのですが、当時の僕は理屈っぽいキャラクターで授業を構成していたのですが、そのときの模擬授業を見ていただいた面接官にひと言「隙を作ればもっとよくなる」と言われました。
それを指摘されてから、自分の理屈で自爆するだったり、生徒さんの屁理屈に負けると言ったことを意識的にするようになったら、一気に生徒さんとの距離が近くなると言う経験をしました。
それに気づいたのは何年も後のことだったのですが(笑)、これが「隙」というものの強さなのだなあと。


「学生講師はハズレが多い」というつぶやきを見て思った事をまとめていたら予想外に文字数が増えてしまいましたが、学生バイトさんの価値の源泉はここにあるというのが僕の持論です。
そしてその価値をきちんと積み上げるために僕がやってきたこと、そしてうちの学生さんに話している事をまとめてみました。
学生さんで塾講師をしていて、自分の仕事に自信が持てないという人がいたら、少しでも参考になれば幸いです。

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