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2024年東大寺学園中国語記述全問解説
第二問 随筆文
問2(設問)傍線部②とありますが、筆者が「折に触れて気にしている」のは、そういう「言葉」ですか。(五十字)
設問の分析
「これも物心ついた頃から折に触れて気にしている言葉で、詩を自己表現と…」
① ②
設問要求の整理
①②主語述語関係から指示語にたどり着く
指示内容を正確に書き出す
解答手順
新傾向で身構えたがために、逆にたどり着くことができないという事態が無いようにしておきたい。傍線部を含む主語述語関係を押さえると「これも~言葉で」という「言葉=これ」であることが分かる。したがってその内容を正確に押さえていけばよい。
すると「これ」は「自分本位を戒めることば」であることが分かる。ただしこれだけでは文字数を満たさない。そこで、その言葉の背景を書き込む。すると次の要素が見つけられる。
・自分にかまけるなという言葉
・母から何度も聞いた言葉
・躾の一環としてかけられた言葉
・ものごごろついた頃からかけられた言葉
これらを含めて解答に仕上げていけばよい。予想される誤答としては論語の一節に触れたものが考えられるが、今回はあくまで「これ」の指す内容を問うたものである。パーツ事に区切って言い換えるというような機械的な解き方をしているとそういった解答になりかねないので注意して設問要求を押さえられるようにする。
第三問 論説文
問4(設問)「対話的姿勢は重要だ」とありますが、「対話的姿勢」が「重要」」になってきたのはなぜですか。(八十字)
設問の分析
対話的姿勢が重要になってきたのはなぜですか。(六十字)
① ② ③
設問要求の整理
① 対話的姿勢がどういったものかを明らかにする
② 「なってきた」から社会の変化を明らかにする
③ その上で対話的姿勢がどうして②のような社会にとって重要なのかを記述する
解答手順
まず①対話的姿勢とはどういったものかを明らかにする。すると傍線②の三段落後ろに「対話的姿勢とは、たとえ相手の言葉が自分の言葉の理解を超えていても、それを相手の心の現実として、受け止める態度である」とあるのでこれが対話的姿勢であることが分かる。
次に②から現代社会がどのようなものであると筆者が言っているかを探す。筆者の現代社会の見方は傍線③の直前に「世界が多様化し、様々な価値観を持った人たちがいる中では」と書いてあるので、これであることを押さえる。
「世界が多様化し、様々な価値観を持った人たちがいる社会」において「相手の言葉が自分の言葉の理解を超えていても、それを相手の心の現実として、受け止める態度」がどのような働きをするかを考えていくと、傍線⑤の二段落前に「対話ができる空間とは、自分が感じている違和感を安心して表明できる場のことである。共通項を確かめることによって安全を得るのではなく、違っていても安全であることを確認する場だ」というように、対話的態度の結果得られるものが書かれている。ここを用いればよい。ここまでの思考過程を改めてまとめると左のようになる。
対話的姿勢=たとえ相手の言葉が自分の言葉の理解を超えていても、それを相手
の心の現実として、受け止める態度
↓(それが確保されている場ではどうなるか)
共通項を確かめることによって安全を得るのではなく、違っていても安全である
ことを確認する場が生まれる
それは「世界が多様化し、様々な価値観を持った人たちがいる社会」に重要だ。
以上を踏まえて次のような解答になる。
(例)世界が多様化し、様々な価値観を持った人たちがいる社会では、共通項を確かめることによって安全を得るのではなく、違っていても安全であると思えることが欠かせないから。 (八十字)
第四問 物語文
問2(設問)傍線部②「なんとなく腫れ物にさわるような重い空気とよそよそしさ。あるいは逆に生まれる妙ななれなれしさ。とありますが、それは周囲の人がどのように接してくることですか。(八十字)
設問の分析
なんとなく腫れ物にさわるような重い空気とよそよそしさ。
①
あるいは逆に生まれる妙ななれなれしさ。
②
とありますが、それは周囲の人がどのように接してくることですか。
③
設問要求の整理
③周囲の人たちが①②のように接してくる理由をおさえる
①「なんとなく腫れ物にさわるような重い空気とよそよそしさ」がどういう態度か
②「あるいは逆に生まれる妙ななれなれしさ」がどのような態度か
解答手順
物語の記述であるが心情ではなく内容を問われているものなので、比較的解きやすいので身構えず挑戦したい。まず③周囲のひとが①②のような接し方をする理由を押さえるのだが、これは傍線②の直前より「母親が死んでしまったかわいそうな子ども、という認識」からくることが分かる。その上で①と②の二つの空気感が周囲のどのような接し方によって感じられるものであるかを明らかにする。
①「腫れ物にさわるような重い空気」と「よそよそしさ」
・腫れ物にさわる 機嫌を損ねないように慎重に扱うこと。
・よそよそしさ 親しみがない様子や他人行儀な様子
これらには「微妙な気遣い」や「遠くで自分を指さしながら言われる『かわいそう』というささやき」が合致する。
②「逆に生まれる」妙な「なれなれしさ」
・なれなれしさ 親しげに接する様子
「逆に生まれる」とは「かわいそうな子だ」という哀れみのことで、その結果生まれる「なれなれしさ」は特別扱いであることが分かる。
以上から次のような解答になる。
(例)母親を幼いころに失った芽以をかわいそうに思って触れないようにしようとする気遣いや、そのことへの哀れみからくる居心地の悪さを感じさせるような特別扱いのこと。
(七十七字)
問5(設問)「すぐに真顔になった」とありますが、「父」が「真顔になった」のはなぜですか。(六十字)
設問の分析
すぐに 真顔 になった
① ②
設問要求の整理
②「なった」というところからその前後の心情をおさえる
①「真顔」から分かる心情を考える
解答手順
心情の理由説明なので基本的にはⅰ何に対してⅱどう感じたのかをベースに要素を考える。まずは②「なった」に注目して前後の「父」の心情の変化を押さえると父親の顔に「照れ笑いのようなものが浮かんだ」「すぐ真顔になった」である。この前後の心情変化をとると次のようになる。
うつむいて泣いている娘 → 急いでぬぐおうとする父
その手を振り切る娘 → 眼を見開く父
父親に液晶画面を向ける娘 → 「ばれちゃったか」と照れ笑いを浮かべる父
芽以の苛立ち → 察知してすぐ真顔になる父
この部分から、「父」は発覚した内容をはじめは軽く受け止めていたが、娘の反応を見て、ずっと重大なことであるとわかる。ここから、直前の態度と娘の反応、それに対する心情をまとめる。
(例)ブログが発覚したことに対する自分の照れ笑いへの芽以の反応から娘を傷つけたと知り娘を心配すると共に申し訳なさを感じたから。(六十字)