「他から」言っていただいたことは「宝」
教員生活1年目の1学期。
「子どもが先生の授業が分からないって言ってます。」
というご指摘を受けたことがある。自分のクラスの子の親御さんではない。隣のクラスの親御さんに、である。その時の算数の授業は少人数指導で行われていた。4年生2クラスを4つのクラスに分け、4人の先生で教える体制をとっていた。つまり、1人の教師が担当する人数は(2クラス)56人÷4=14人。その中には自分のクラスの子だけでなく、隣のクラスの子もいたのだ。当然、少ない人数の方が子どもの理解は深まりやすい。だが、それでも、子どもたちから「授業が分からない」と言われてしまった。
何となくその当時の授業の流れは覚えている。
例えば、分度器の使い方に関するもの。
「今日は、分度器を使います。分度器は、角度をはかる道具です。ここに、2本の線があるでしょ(黒板を指さす)。この2本の線にこうやって分度器を合わせます(実際に前で合わせてみる)。わかったかな?じゃあ、教科書の問題に取り組んでみよう!」
その当時は授業の仕方がまるで分かっていなかったと思う。そのご指摘を受けた後、実際に先輩の先生の授業を見せていただいた。
★ベテランの先生の授業(分度器学習2時限目・冒頭)
先生「今、分度器で角度をはかる勉強をしています。どうやってはかるんだったっけ。確認しよう。1つ目は?」
児童「分度器の十字を頂点に合わせる!」
先生「2つ目は?」
児童「1本の直線を(分度器の)下の線に合わせる!」
先生「3つ目は?」
児童「合わせた線から0の方を読む!」
先生「0から読むのが大事だったよね。180度から読んだらー?」
児童「ダメー!」
言葉のニュアンスの違いはあるだろうが、分度器の合わせ方を3つの手順でしっかりと示されていた。1時限目で手順を学習し、2時限目の始めにもこのように復習をすることで、多くの児童がそれを身に付けられた。一方、私の授業ではそのような手順を一切示さず、「こうやって合わせます」と見せただけ。「こうやってってどうやって?」というツッコミがきそうである。この授業を見せていただいた私は「え、そこまで細かく手順を追わないと、子どもって分からないの?」と思い、衝撃を受けた。でも、今ならこのスモールステップを当たり前だと感じる。
その当時は保護者の方からのご意見をたくさんいただいた。ご意見をいただく度に落ち込んだし、自分を責めることもたくさんあった。しかし、そういった経験をしたからこそ、気付けたことが数多くある。
よく、保護者の方から「苦情を言われた」などとマイナスにとらえてしまう先生もいる。しかしそれは、先生への期待値ととらえることもできる。辛い経験をプラスに変えていく力もこれからの教師には必要なのかもしれない。私はそう思えるのにすごく時間がかかったタイプの人間である。
今思えば「他(た)から」言っていただいたことはいいことも悪いことも「宝」なのだろう。これは、尊敬する私の恩師からいただいた言葉である。
このブログでは、現役教員としてたくさんの失敗を積み重ねてきた私が、当時の失敗を今ならばどうするかという視点をもち、書いています。教師として働いている皆様に向けたヒントとなることがあれば幸いです。
また、時には教育の世界に向けた私自身の思いを語る場になることもあるでしょう。
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