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子どもの様子をきちんと見ること ~彫刻刀の指導より~
高学年は、3学期の図工で、版画の作品制作を行う。
そこでは、当然ながら彫刻刀を使用する。
日頃、大人でも使うことのない刃物。できることなら、怪我の無いように進めていきたいものである。
教師生活9年目、5年生担任。
例のごとく3学期に彫刻刀の指導を行った。
その日は、2時間続きの図工の授業。
持ち方や彫り方の注意点をおさえ、「怪我の無いようにね」と釘をさしてスタートした。
子どもたちは集中して彫り進めた。
しーんとした空気の中で1時間が過ぎた。
その間、私は、机間指導を行い、持ち方の違う子に指導したり、ついつい刃先の延長線上に反対の手を持ってきてしまう子に注意を与えたりした。
2時間目が始まって間もなく、
「先生、指を切ってしまいました。」
真面目な男の子が肩を落として私の元にやってきた。その子は、1時間目の机間指導で、「ついつい刃先の延長線上に反対の手を持ってきてしまう子」だった。
「もー、だから言ったじゃん。痛いでしょ、保健室行っておいで。」
その時の私は、「注意を促していたし、怪我をしたのは本人の責任が大きい」と思っていた。
1年後・・・
持ち上がった6年生の3学期。
また例のごとく彫刻刀の授業を行った。その時、職員室で学年団の先生から、こんな話があった。
「1時間彫刻刀をやらせたら、子どもの集中力が切れちゃって。危なっかしいから、彫刻刀は、(2時間続きではなく)1時間ずつやっていきます。」
私は、何となく「分かりました、僕もそうします。」と答えた。
話を受けてすぐは、あまりピンと来なかった。だが、物は試しだと思い、教材研究も兼ねて、自分でも彫刻刀を使ってみた。
すると、どうだろう。
正直、30分でへとへとだった。慣れない指使いに加え、線の太さに応じた力加減も難しい。
こんなに疲れる作業を長時間やらせていたのかと、正直愕然とした。
そして、あの怪我をした男の子の立場に初めて立った気がした。
大切なのは、子どもの様子をきちんと見ることなのだろう。「疲れているな」「怪我してしまいそうだな」と、見ていく中でとらえること。学年団の先生はそこを見極め、判断をされていたということになる。
それまでの私は、ただ時間割とにらめっこし、子どもの実態をあまり考えずに授業を組んでいた。
彫刻刀、電動糸のこぎり、ミシン・・・特に高学年における実技教科においては、一歩間違えれば大きなけがにつながるものも多い。「長時間の活動に子どもたちが耐えうるか」という視点をもち、実態をしっかりと把握しつつ、授業を進めていきたいものだ。
このブログでは、現役教員としてたくさんの失敗を積み重ねてきた私が、当時の失敗を今ならばどうするかという視点をもち、書いています。教師として働いている皆様に向けたヒントとなることがあれば幸いです。
また、時には教育の世界に向けた私自身の思いを語る場になることもあるでしょう。
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