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とろける玉子とエディブルフラワー。花屋さんで食べるタコライス『LORANS.』

 ──花というのは、食べられるらしい。

 それを知ったのは最近のこと。考えてみれば刺身に添えられている食用菊とか、桜の塩漬けとか、小さい頃から食べられる花の存在は身近にあった。ブロッコリーのわさわさした部分なんて全部つぼみだ。それなのに、どうして私は食べられる花と聞いて、一瞬、驚いたのだろう。
 この驚きというのはネガティブなものではなく、「え!? この花食べられるんだ!」という心沸き立つポジティブな驚きだった。実際に食べたのはこの日が初めてだったが、花に対する見方が少し変わって面白かった。

チーズと温玉とろけるタコライス。

 さて、花々で彩られた入り口を抜け、タコライスを注文する。その日座ったカウンター席は窓越しに外が見え、テーブルに飾られた花も相まって、日常から離れた不思議な感じだった。

タコライス

 タコライスは彩り豊かで、辛味のある、そしてチーズの上に温泉玉子がのせてある。温泉玉子の上には、紫色のビオラ。天辺にスプーンを入れ、玉子の黄身を広げると、こぼさないよう少しずつ掬い上げて食べていった。
 タコライスにはとても辛いものと辛さが控えめなものがあるが、この店のタコライスは辛いものが苦手な人でも食べられる。肉単体で食べたら辛いのかもしれないが、同じ皿にチーズ、温泉玉子、ミニトマトといった食材が同居しているため、辛さを中和してくれるのである。
 真ん中を食べる。温泉玉子チーズの甘さが、ぴりりと辛いの味とうまく合わさる。
 野菜を掬い食べる。新鮮でしゃきしゃきとしている。ミニトマトは甘味が強く、口のなかでプチっと弾ける。
 散りばめられたタコスのチップをかじる。パリパリしており、少し辛い。
 最後に、温泉玉子の上にのっていたビオラを食べてみる。花自体の主張は少なく、タコライスの風味を損なうことはない。花があることで、より現地でタコライスを食べているような非日常感が演出される。そんな空気を感じながら、美しい花に囲まれ、おいしい料理を味わうのは、格別の一時ではないだろうか。

おわりに

 この店にはドライフルーツなども沢山置いてある。タコライスを食べおわり、レジに近づいたとき、私は箱に詰められた宝石のようなドライフルーツに魅了された。
 軒先にはブーケや鉢植えの植物が置かれ、季節ごとに違った顔を見せてくれる。
 この店で食事をとって帰る頃には、そうした視覚的な美しさに浸り、すっかり癒されていることだろう。
 今度来たときは、ブーケも買おうと思う。


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