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2020/9/14(うたの日366)

このところ無口になった食卓のキムチは少し酸味を増して/春原シオン
(2020/7/18「キムチ」)

小説のワンシーンのようなさりげない切り取り方が良いと思う。説明的ではないのに前後の生活を想像させる感じというか。…「このところ無口になった」のは誰なのか、ということで読みが変わってくる気はする。「食卓」で対面している誰かがいて、その「誰か」であるかもしれないし、主体であるかもしれない。…一応、自分としては「食卓」は家族、両親や兄弟姉妹などが揃っている「食卓」として読んだ。「無口になった」のは主体自身のこととして読むのが面白いかと思った。
主体を取り巻く環境などが変わって、家族との話題に無邪気に加われなくなった。もしくは、家族に話せないことがだんだん増えていった結果として「無口になった」のかな、と。酸味を増したキムチと主体の心情は響いているだろうけれど、それまで話しながら食べていた食事が無口になったことで、その味に気付いたようにも読めた。大人になった、まではいかなくとも、主体は「子ども」から次のステージにいってしまったのだろう。また、キムチが酸味を増すのは乳酸発酵が進んだためで腐ったわけではない、ということも含めて考えるとなお読みが膨らむようにも思った。


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