2020/9/18(うたの日366)
うろたえているなコーヒーメーカーも 今日ふたりぶんなんですかって/はね
(2020/7/17「2300杯目に起こった奇跡」)
一読して、かわいい歌だと思う。リズムも面白い。上の句は「うろたえて/いるなコーヒー/メーカーも」と句跨りと句割れが起こっている。また上の句と下の句の間に一字開けがあって、動揺の大きさが如実に解る感じ。
この視点は、喫茶店の店員のものなのかと読んだのだけれど、「コーヒーメーカーも」なのでもちろんその店員も動揺しているのだろう。コーヒーメーカーは二杯分吐き出すことへの動揺だろうが、店員の方はさらにその「ふたりぶん」の相手がどんなひとなのかを見ている訳で、おそらくもっと動揺しているんだと思う。その動揺は「コーヒーメーカー」を扱う手つきにも表れているのだろうし、そう考えると先程の句跨り・句割れ・一字開けがコーヒーメーカーの不具合(=動揺)以上の一体感のある「動揺」として読み取れる。ちなみにこの歌は単体で読んでも充分いい歌だけれど「2300杯目に起こった奇跡」の部屋として読むともっとぐっときてしまう。…一日一杯のコーヒーを喫茶店で飲んだとすると、2300杯飲むのには6年と3ヶ月はかかる…6年3ヶ月のルーチンが崩れたというだけでなく、6年3ヶ月をそっと見守っていた店員とコーヒーメーカーの暖かさがとてもいいなと思う。