2020/8/30(うたの日366)
書物には切符がひとつ挟まれて短夜(たんや)の夢に碧のみずうみ/架森のん
(2020/8/16「碧」)
「碧」部屋の短歌なのだけれども、「碧」を上手く使った短歌であると思う。切符ってはきりした色合いではなくて、その微妙な色合いを上手く捉えている。モノクロのページにそれが急にあらわれたら、確かに「みずうみ」のようにきれいな景だろう。
また、視点が面白くて「挟まれて」なので主体が切符を挟んだのではないようだ。主体が挟まれていた切符を見つけた、というのがストレートな読み方なのかもしれないが「短夜の夢」という表現で、書物の視点としても読むことを推してみたい。誰かに、切符を差し込まれたことによって、夢のなかに突如、みずうみが出現したかのように。閉じられているとき、書物は眠っているのだという発想が素敵だし普通の夜ではなくて「短夜」というのがいいなと思う。ちなみに「短夜」は夏の短い夜のことであり、なんとなくこの書物はシェイクスピアの『真夏の夜の夢』だったりするのかも、とも連想した。
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