2020/8/9(うたの日366)
ちょっとその胡椒取っての勢いでくしゃみのような恋の始まり/甘酢あんかけ
(2020/4/29「胡椒」)
この「勢い」は「ちょっとその胡椒取って」と勢いをつけて云ったということと、くしゃみの勢いの両方にかかってくるのだと読んだ。自分でくしゃみを出そうとして頑張るところから勢いがはじまっている。ただ、それは自分の内側からは生まれてきてくれなくて、胡椒の力を借りたことに喩える、ということがなんだか可笑しい。「恋の始まり」というのも良くて、これとくしゃみが合わさって、なんとなくまだ十代くらいの幼い恋心のような感じかな、と思った。この「胡椒」で頑張るところを、成人したらわたしたちは容易くお酒でやるようになるし、また恋は今から始める、と思って始めるものではなく、だらしなく気がついたら始まるものなのだと気づいてしまう。「恋の始まり」というのは、告白のこととして考えて良いのかなとも思う。「告白=恋のはじまり」と捉えられる関係がひどくまぶしいし、また、「ちょっとその胡椒取って」のテーブルでの話から恋に着地する構成は予想外で面白い。かつ、食卓での話からはじまるのは、この恋の未来も想像させるようにしているのかなとも思った。
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