2020/7/26(うたの日366)
「ラッキー」と相手のミスに手をたたくときに生まれて遠ざかるもの/倖
(2019/9/28「ラッキー」)
すごく上手い歌だと思う。実際にわたしたちがついやってしまう光景を切り取っていてはっとさせられる。試合の場合、相手がするミスは確かに惜しい、とか頑張っているという気持ちで見られない…闘争心はどうしても醜くなるし、真剣であれば冷静さを保つことも難しい。でも、この歌はそんな態度が自分たちの勝利を遠ざけると詠んでいる。だがそれは直接的な言葉ではなく「相手のミスに手をたたくときに生まれて遠ざかるもの」としていて、標語的な調子になるのを巧みに避けている。かつ、「手をたたく」「生まれて」「遠ざかる」と動詞を重ねることによって、ちいさな祝福や勝利の兆しが泡のように立ち昇って遠ざかっていくまでをカメラワークで見ているような感覚になる。とはいえ、「だからフェアな精神で戦いましょう」とまでは踏み込んでいないのがこの歌を良い距離感にさせている。なんとなく視点が後方の観客よりの立場で、マナーの悪いサポーターたちを遠くから眺めているような雰囲気が、そうさせているのだとも思った。
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