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2020/9/15(うたの日366)

昨晩の星に降られたTシャツはすこし縮んでひかりのにおい/鈴木ジェロニモ
(2020/7/27「降」)

洗濯物を夜に干して、もしくは取り込み忘れてしまったことの景だとわかる。ただ、わたしたちは実際「Tシャツはすこし縮んで」いることしか、ふだん物理的にしか解らない。けれどこの歌はわたしたちが知覚していないだけで、本当はTシャツは「昨晩の星に降られ」ていたこと、洗剤の匂いだけでなくて「ひかりのにおい」もするであろうことを教えてくれていて、すごくいいなあと思う。
「昨晩の星に降られた」のはその夜に流星群があったから、などとしても読める。だけど、実際わたしたちの眼には見えなくても頭上には常にたくさんの星があり、星のひかりはいつも浴びている、と読んだ方が面白い気がする。「ひかりのにおい」も、柔軟剤の匂いに紛れているだけであり、そういう匂いが実際にあるのだと感じさせてくれる。ほんとうは常に起こっているはずの事象を敢えてこういう風に言語化することで、日常をすごく鮮やかなものにさせてくれる歌だと思う。

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