2020/9/20(うたの日366)
ぬばたまのロッキンホースバレリーナ星がうるさい農道をゆく/久藤さえ
(2019/6/10「ROCK」)
「ぬばたまの」は夜に掛かる枕詞だけれど、その古語を「ロッキンホースバレリーナ」と結び付いて化学反応が反応が歌のなかで生まれていると思う。ちなみにロッキンホースバレリーナはVivienne Westwoodがデザインしている靴で、踵が高い、というよりか底が厚い木靴……なので、これで農道を歩ける主体はかなり歩き慣れているだろう。また、「ロッキンホースバレリーナ」と「農道」が結びつくのも化学反応的で、違う世界のものをぶつけて、でもしっくりいっている感じが全体にある。
個人的に嶽本野ばらの小説がすごく好きで、一読して『下妻物語』のシーンが思い浮かんだ。茨城県の下妻に住んでロリータをやっている桃子が履いている靴もロッキンホースバレリーナだ。「星がうるさい」は農道から見上げた景色であるのだろうけれど、主体の周囲の人間のうるささも含まれているのだと思う。自分の好きな格好でわが道をゆくかっこいい(ロリータ服の)主体がすごく良い。