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2020/9/17(うたの日366)

「大」の字を勢い余って「犬」と書いたあなたのことが犬好きでした/朝田おきる
(2020/3/28「大」)


勢い余って「犬」と書いてしまっている残念加減がじわじわきてしまう…三句目の「「犬」と書いた」は六音で、かなり勢い余ってしまった感が出ている。でも、下の句を読むと残念な「あなた」がかなりの幸せ者であること、かつ、「あなた」に想いを寄せている主体もかなり勢いを余っていることが判明する。主体の、好きすぎてフィルターがかかってしまった感を面白がって読むだけでも充分楽しい歌だけれど、非常に優しい世界がこの歌のなかにあると思う。
寺山修司の詩に「ここにひとりの片恋がいるということは、 世界中のどこかに、 その片われがいるということなのだ。」という一節があり、どんなひとでも誰かのための片割れなり得る、と云ってくれている。この歌もちょっとそういうところがあり、「勢い余って「犬」と書いたあなた」に自分を重ねつつ読んでみると、今のままの自分でも大丈夫なのだと心強くなれる。…結句の「犬好きでした」と過去形になっていることは、もう好きではないのではなく、そういう馴れ初めだったということを振り返っているのだと、個人的には読みたい。

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