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【山陽バスむかしさんぽ】(12)旧道商大筋
垂水区の中心を南北に貫く商大筋。
その東側に残る商大筋の旧道を7系統の山陽バスが行きます。かつて商大筋の本線だった頃はたくさんのバスや車が行きかっていたこの道も今は時折わずかな車が通るのみとなりました。
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現在は「星陵高校前」と停留所名を変えた「商大前」へ山陽電鉄バス(当時)がバス路線を開設したのは1936年のこと。当時のバスはこの旧道の商大筋を経由していました。2006年10月に商大筋の新道が整備され、山陽バスの各系統は新道経由へ切り替えられましたが、9系統(清水が丘→垂水駅)のみが旧道経由のまま残されました。9系統は2020年3月に運行を休止しましたが、代わりに7系統(垂水駅→多聞台→垂水駅)が旧道経由へ切り替えられました。また、神戸市交通局さまの171系統(学園都市駅前→掖済会病院前→垂水駅)も旧道経由です。
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旧道区間に唯一あるのが千代が丘停留所です。新道の千代が丘停留所からはわずかな距離ですが、高低差はこんなにあります(バスが停まっているのが旧道の停留所)。
そのせいか、旧道の停留所を利用される方も少なくありません。
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旧道千代が丘停留所から少し坂を上った先。古い住宅地図にはこの辺りに「商大下」というバス停が記されていました。今は真新しい住宅が建ち並び、停留所の痕跡は見当たりません。
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天神川の谷間を通る旧道に対して、新道の商大筋は舞子陵へと続く台地へと駆け上がっていきます。写真左側の旧道から新道や星が丘へ上る坂道は目を見張るような急勾配で、いかにも垂水の道という光景です。
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民家の隙間に「山陽電鉄バス」の表記が残る注意看板が残されていました。この道が旧道となる前から、この看板はここでバスに注意を促していたのでしょうか。
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旧道の商大筋の坂道を上っていると、やがて新道の擁壁がそびえるようになりました。
この先で旧道は新道と合流します。
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現在の舞子駅・舞子台からの舞子山手線と垂水駅からの商大筋が交わる星陵台中学校前交差点はかつては二つの道が平面に交わっていましたが、現在は改良工事により立体交差となりました。かつての商大前停留所があったのはこのあたりのようですが、現在は景色が大きく変わり、停留所の痕跡はありません。
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星陵台中学校前交差点からは垂水の街並みとその向こうにそびえる六甲山地の西端の山並みを望むことができました。
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廃線跡調査が一つのジャンルとして成立している鉄道趣味に対して、バス路線は休廃止されればそこはただの道路になってしまいます。そのせいか、「廃バス跡」の調査はバス趣味の世界でもかなりマイナーな分野なのが現状です。しかし、「廃バス跡」の調査からは忘れられ、失われてしまったちょっと昔の町の姿が見えてきます。この「山陽バスむかしさんぽ」シリーズでは、今の神戸や明石を歩きながら、かつて走っていた山陽バスと昔の町の面影を辿っていきたいと思います。
参考文献山陽電気鉄道株式会社『山陽電気鉄道百年史』(2007年)山陽電気鉄道株式会社『山陽電気鉄道六十五年史』(1972年)