西粟倉・森の学校/BASE 101%-NISHIAWAKURA-|岡山県英田郡西粟倉村(その2)
大好きな山のある西粟倉でやれること|人と自然の可能性発掘②
〈前回の記事はこちら→小さなこの村を目的地に|人と自然の可能性発掘①〉
鳥取県と兵庫県との県境に位置する人口約1,400人の小さな村、西粟倉村。穏やかな田舎道を車で走っていると、ふと目の前に、森の風景が写りこむ美しいガラス張りの建物が現れました。
「BASE 101% -NISHIAWAKURA-」。今年3月にオープンしたばかりのこの場所は、鹿肉料理も楽しめるカフェや、DIYに使える端材の並ぶマーケット、そして向かいには苺摘みを体験できるいちごハウスも。
この複合施設の中心となっているのが、西粟倉・森の学校の営業部長、羽田 知弘(はだ ともひろ)さん。
学生時代に林業を学び、その頃からつながりのあった西粟倉・森の学校のあるこの村へ8年前に移住して来られたそう。お店の運営や苺の栽培など、 BASE 101% -NISHIAWAKURA- の指揮をとるキーパーソンです。
「ライフとワークがぱきっと分断しないので、グラデーションに近いイメージで仕事も暮らしも楽しんでいます。その領域が深い方が誰かの力を借りやすいし、いろんなことを始めやすんですよ」
この羽田さんの言葉を聞き、そういうことか、とふと納得した自分がいました。
例えばここのお食事メニュー。
鹿肉を使用した「10彩1汁膳」や「鹿肉と山椒のキーマカレー」などの珍しいメニューがありますが、この鹿肉は羽田さんや地元の猟師さんが地元の山で捕られたもの。ジビエ料理というと少し癖のあるイメージがありましたが、「野生肉の美味しさをいかに美味しくいただくか」にこだわった料理たちは、まったく臭みがなくどれも絶品でした。
デザートにいただいたのは、ご近所の酪農家・白岩秀之さんが育てた牛乳を100%使用した「白岩さんの無添加ソフトクリーム」。羽田さんおすすめのこのソフトクリームは、着色料や香料、乳化剤などを一切使用せず、安心・安全な美味しさを求めて作られた逸品です。
「白岩さんが毎日休まず育てた牛の牛乳を、自分たちの手をかけることで価値を最大化できるように。」
そんな思いで作るソフトクリームはお客様にも好評で、ご近所の小学生がお小遣いを握りしめて食べに来てくれることもあるんだとか。牛乳をソフトクリームとして無駄なく・美味しく提供することが、白岩さんや地域の方、そして足を運んでくれるお客様とのつながりを生み出しているということを実感しました。
そして、この場所に着いてから気になって仕方がなかったのが苺です。西粟倉村にどなたか苺の専属農家の方がいらっしゃったのかな?と思いきや、こちらは羽田さんを筆頭に始まった新しい取り組みとのこと。
この取り組みを始める理由のひとつとして、特に印象的だったのが「木材でやっているノウハウが活かせる」ということでした。
「1本ずつ個性が違う丸太を一定の品質の木材製品に加工する」木材加工の流れと、「ひとつひとつの苺を環境など様々な要因をコントロールし、一定の品質に育てる」苺栽培の流れ。 自然のものを商品化するという共通点を見出し、実際にそのノウハウを生かしながら美味しい苺を栽培されています。
知識を活かしながら苺を栽培することで、人の訪れたい場所に。そして、全く新しい試みに見えて、そこにはしっかりとした西粟倉村ならではの軸とつながりがあることを感じました。
こうして、西粟倉村の資源である木材はもちろんのこと、村で生きる野生動物の命や、古くから暮らしている人の仕事、そして積み重ねてきたノウハウをも活かすことで成り立っている BASE 101% -NISHIAWAKURA-。
「基本的にはみんな素人。苺も飲食も。でもそれが大事。人ありきで成り立っているからこそ、自分たちの興味やできることの範囲を広げながら、自分がやるべき仕事・やりたいし仕事をどう作るかなんです。」とおっしゃる羽田さん。
山が大好きだという羽田さんが、 あたり一面が緑に包まれた西粟倉村にいらっしゃる理由はこれかと、そのまっすぐな思いに心を打たれたのでした。
取材をさせていただいてからというもの、これからの西粟倉村・森の学校とBASE 101% -NISHIAWAKURA-、そして羽田さんの暮らしぶりについても、ついつい気になっている私がいます。
BASE 101% -NISHIAWAKURA-は、また何度でも訪れたいと思える、思い入れのある場所になりました。
〈養蜂から未来を描く|人と自然の可能性発掘③ へつづく〉
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