映画『ドラえもん のび太の地球交響楽』感想
この記事は2024年03月13日にfc2ブログに掲載したものの再掲です。
フォロワーさんが定期的に感想をふせったーに出していたのが気になっていたのですが、先日通話でお話した際に、ほかのフォロワーさんからも「ぜひ観るべき」と推されたので観に行きました。
あまりにもよくて、私たぶん後半30分くらいずっと泣いてたかな。めちゃくちゃ良い映画である上に私との相性が良かったですね。
とても気分が良かったので、映画のあとの買い物を中止して歩いて帰りました。この映画を観た後に、いろいろ思案を巡らせながら少し歩くという時間を取れてよかったです。
以下ネタバレあり感想です。
前情報で「宇宙と音楽がテーマ」「対峙する敵が過去一スケールがデカい」と聞いてたので、マクロスみたいな感じ? とか言ってましたが、マクロスとは違いましたね(それはそう)。
宇宙と音楽がテーマでスケールがデカくても、マクロスは文化交流としての音楽がテーマなので、そこの色はそんなに強くなかったです。いやどうだろう、そういう部分も描いてはありましたが、そこが主題って感じではなかったかな。
音楽っていろんな要素があると思うんですけど、この映画の音楽は「聴いてると、歌っていると、たのしくなってくる!」の部分が強いかなって思いました。ある種「心の交流」を描いていますが、マクロスほど「文化」みたいな複雑さはないかな。もっと純粋で根源的な「音楽」でした。それこそ野菜を切ったり、トイレに入りたくてドアを叩く音を取り上げているくらいなので、もっとシンプルな「音」を感じたかな。
敵のスケールのデカさはほんとにデカかった。惑星を食う宇宙生物ってMCUでもあんまないイメージ。GotGのエゴとかかな? あのレベルの敵はヤバいわ。
後半ずっと泣いてたんですけど、私、「閉じた前向きさ」みたいな音楽演出にめちゃくちゃ弱いんですよ。
モアナの序盤の村での歌とかがそれなんですけど、前向きで明るいんだけど、その「先」がなくて、閉じている、絶望まではいかないかもしれないけど、未来が開かれていない。そんな感情が音楽で演出されると一瞬で泣いてしまいます。
この映画にもそれを感じてずっと泣いていました。クライマックスのノイズを退けるためにシンフォニーを弾くとき、ムシーカのロボットたちはもう仕える主がミッカしか居なくて、だけど同じ過ちを繰り返さないために地球を救うわけじゃないですか。
彼らにはあの時点で未来がなかったけど前向きに戦っていた。その感情が音楽で演出されて、以降ずっと泣いてました。
なのでほかの船と交信できたって聞いて本当に良かったです。あの閉じた前向きさは閉ざされていなかった……よかった……
のび太のあらかじめ日記の「みんなでおふろにはいった」のスケールのデカさ、ひみつ道具特有のガバさかもしれないんですけど、私はのび太にとっての「みんな」は少なくとも地球の「みんな」は軽く収まってしまう愛の持ち主なんだろうなって思って、なんかのび太って良いやつだなあとしみじみしていました。
この映画、マジで登場するシーンに無駄がなくて、脚本書いてる人めっちゃ頭良いんだろうな~! と感心しきりでした。
しずかちゃんと二回同じ帰り道を歩くんですが、そこの電柱広告に「ママハ音楽教室」て書かれてて、ここまで音楽ネタで詰めてあるんですよ。すごいですよね。
シンフォニーという題がつけられていることもあるのか、作中で楽器の腕を上達するジャイアンとスネ夫が、お互いの音楽を尊重できないシーンが描かれていたのも、音楽の細かい要素を出しているなと思いました。
いやまあ私はシンフォニーがなんなのかは知らないんですけど、音楽って独りよがりではいけないものだから、そこをちゃんと描いてるのは親切だなあって思う。
音楽の文化的側面は主題ではないとは書きましたが、ミッカの妹のくだりはそこを担当してるシーンだなって思います。
マクロスでも文化とは愛であるって描き方をしてるので、私はあのシーンの、音楽で繋がる愛は文化だなあって思う。それこそ、それがきっかけで博物館に残る遺物がつくられてるのって、文化だよなあ。
とにかくシナリオがすごくて……マジで無駄なシーンがない。
冒頭の不思議な赤ちゃんでワクワクさせる気持ちを出しつつ、ミッカの妹の説明をするし、のび太のお父さんがトイレから戻ったときの不思議な光の伏線は即行で回収する。
伏線をちりばめることも上手いのですが、回収の順番も上手い。重要な内容はすこし焦らすけど、ちゃんと気になるものは全部説明する。脚本が上手すぎる~!
怖いシーンはガチで怖いのもメリハリがあってよかったですね。マエストロ・ヴェントーが停止してたシーンはマジで怖くて本当に泣いたので……あそこから復活して良いんだってくらい怖かった。
宇宙で音がしなくて、のび太が叫んでるのに何も音がしないのも本当に怖かった。直前で「念のため適応灯を照らしておこう」のセリフ、なんとなくで聞き流してたんですけど、ほんとうにこの「念のため」が活きてて怖かったな……。
ゲストキャラクターも本当によかったです。私はモーツェルさんが結構安心感あって好きだな。
ミッカの序盤の「不思議な女の子」感がめちゃくちゃ良かったので、言葉が通じた瞬間に眼鏡キャラが眼鏡外したみたいなやや複雑感情を抱きました。いや、全然良かったんだけどね! 別の良さがあってね!
歌が上手い設定のキャラ、マジで歌が上手くないと説得力がないので、そこをクリアする歌声ってすごいですよね。
サイトのキャラ一覧を眺めてて思ったのですが、ファーレが動力源として使われていた文明の船に、ファーレ工場があるの、世界観の説得力があっていいですね~。ミッカが自分の部屋に入るのに歌って灯りをつけていたのも、生活の一部って感じがしてよかった。ろうそくに火をともす動作みたいな感じで、歌を歌って灯りをつけているんでしょうね。
クライマックスの、のび太の「の」の音なんですけど、このシーン、直後から「なんて優しいシーンなんだ……」てなってそれもあってずっと泣いていました。
あのシーン、「君が欠点と思っていることも、ひょっとしたら世界を救うかもしれないよ」というシーンなので、めちゃくちゃ救いがあるんですよね。みんなが求める基準から外れたことしかできない子の、その外れた行動が、ひょっとしたら何かの役に立つかもしれないよって。
すごく優しいシーンだと思います。のび太が根本的に抱えるテーマでもあると思います。なにをしても駄目な子って、本当に駄目な子なの? ていう部分はどうしてもあるから……。
のび太も決して駄目な子ではないんですけどね。今回もミッカと秒で仲良くなってるし。音楽準備室に飛び込むか悩んだとき、ミッカの歌声を聴いて飛び込むことを決断する勇敢さもある。本当に良い子なんですよ……。
もうちょっと書く順番をまとめて綺麗に書こうかなとも思ったのですが、とりあえず衝動でざっと書きました。本当に良い映画でした。久々にこんな泣いた……良かった……。良かったです。