小児がん女子・シーズン2(5)
長女にストーマをつくることになった。ストーマとは、人工肛門のことだ。
大網切除~術後感染からの、腸に穴があいてしまった、という流れだ。炎症反応の原因はこれだったと。塞ぐことは可能らしかったが、不具合がないかを確認するのにはそれなりに時間がかかるらしい。血液内科の先生からは、早く化学療法を始めたいと。
じゃあ、一時的に人工肛門にしちゃおう!ということになった。さすがに「えーホントですかー」と半ば笑ってしまっていた。まさかの流れに、頭がまったくついていけてないかったのだ。
長女はというと、人工肛門がどんなものか説明を受けたがイマイチわかってないようで(私もみたことがないからわかっていなかったけれども)、相変わらず「おしっこの管はつけますか?」と聞いていた。
そして、休日だが緊急手術になった。こんなことになるとは知らず、長女は直前までミルクティーとお煎餅を食べていた。
麻酔科の医師が、何を何時まで食べたか聞き取りに来た。「え、ミルクティー?お煎餅も?よりによってミルクティーかぁ」と、呆れ口調だった。
「こうなるってわかってたら、食べさせるわけないでしょ!」と言い返した。サインも書きなぐって叩きつけるように渡す。あとで、優しい看護師さんに慰められた。その後、その医師とは目も合わせないし話さなくなった。
緊急手術は3時間くらいで終わった。無事にストーマがつくられた。会社から駆けつけた夫は混乱しており、「なんでこんなことに…」と暗かった。外科の先生が、夫に人工肛門の説明をする。
「渡哲也さんの人工肛門とは違い、一時的なものです」といっていて、こういうときにも芸能人の存在って意味あるものなんだなーと思った。
事情はどうあれ、がん治療ではこういうケースもあるという。後日、知人が「友達がストーマつくって治療し、元に戻した」といっていた。
先生は絵を描いて説明していくうちに、勢い余って「う○こは、ここから出てきます」といった。ずっと「便」っていってたのに。
説明を聞き終えて病室に戻るとき、夫が「先生、う○こっていっちゃったね」と。こんなことで、夫の混乱は落ち着いたようだった。
翌日以降、おしっこの管に苛立ちながらも、長女は新しい相棒について彼女なりに調べていた。入院に際してiPhoneを手に入れた彼女は、母を上回る検索魔だった。
ちなみに、入院すると高学年以上のスマホ管理は徹底できない。だから、耳年増になったり、大人びてしまったりするのは避けられないと私は考えている。(命を失うことに比べたら、大したことない)
「YouTubeでストーマ説明してた」と。ほかにも、ストーマについて解説されたサイトも見せてもらった。決してへこむことなく、向き合っていた。
これから、慣れないストーマケアで長女も私も大変になる。加えて、化学療法の苦しさも待ち受けている。
でも、ようやく化学療法まで漕ぎ着けた。
今シーズン、3回目の手術だった。しまう手術の4回目も待っている。退院するのは春を過ぎるだろう。
BP.チャンネルFes.にも行けず、ついでに私は最前列のチケットを手に入れていたSIDのライブにも行かれなかった。「行ってみたい!」と友だちに頼んでいたのに…あぁ。
思った以上に長くなりそうなシーズン2、主役の長女が少しでも楽しく、実りあるものになるように。今期もV系の力を借りて頑張っていく。
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