「もうやれることはやった」と言った後に できる改善施策
「もうやれることはやった」
日々事業再生のご相談を社長としていると、
「もうやれることはやった」とみなさんおっしゃいます。
よく聞く対策は、
・外注費の内製化
・購買先の多様化
・在庫の圧縮、リードタイムの短縮
・見積合わせ入札の徹底
・宣伝広告の制限、見送り
・事務用品の購入制限
・コピー機単価の見直し
・携帯契約の見直し
・調達金利の引き下げ
・家賃引き下げ交渉
・オフィス面積の縮小、引越
・資産売却
・管理車両台数の削減、駐車場契約見直し
・契約電気料金の見直し
・裏紙利用
・空調の温度制限
・新規雇用のストップ
・派遣派遣契約の停止
・残業禁止
・福利厚生見直し、定期券購入の見合わせ
・シフト見直しによる人員調整
・宅配契約の見直し
・警備会社の見直し
・ビルメンテナンス見直し
・清掃会社との契約見直し、清掃頻度見直し。
・リース契約の見直し
・雑誌の定期購読停止
・会合、学会、寄合、団体からの脱退
・税理士、弁護士など顧問契約の見直し
などなど効果の大小も内容も様々で、賛否もありますが、やれることは限りなくたくさんあり、真摯に向き合っておられます。そして、この30年に及ぶと言われる不況と、バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍と相次ぐ試練でみなさんやり尽くした感があります。
お金を使う経費削減・売上を減らす経費削減
ただ、本当にやれることは全てやったのでしょうか?認定事業再生士の私としては、社長の血のにじむ努力に敬意を払いながらも、“単月の収支が黒字になっていない”ならまだ不十分だと思います。
業種によっては、季節指数(季節による売上の大小)の変動が大きい場合もありますが、原則論としては、単月の収支が成り立っていないのであれば、経営改革の動きは不十分と言わざるを得ません。(厳しいかもしれませんが、収支が合わないことを放置し見逃せば会社の存亡に関わります)
守りの手として原価逓減策や販管費の圧縮策を更に実行する為には、逆に攻め手としての戦略的な投資も検討が必要です。原価低減のための機械装置の導入、新たな設計変更、金型の作り直し、等も視野に入ります。営業マン人数を減らすために自社サイトの高度化、SNSでの発信、提案資料のデザイン費用など、打つ手は無限ですが、投資が伴ってこそ原価が減らせる方策です。手元現預金が打ち手の数を制約し、成果が上がるのを待つ事ができる時間的な制約ともなります。
それでも単月収支がなり立たない場合は、計画的に質の悪い売上を削減する方策をおすすめしています。売上を維持するためには営業マン、営業所、車両費、出張旅費、在庫、倉庫、運賃、梱包資材など様々なコストが掛かります。顧客を見直す、営業エリアを見直す、商品展開を見直す事により、単純な経費節減努力では減らなかった経費を減らすことができます。おまけに仕入と販売、代金回収までのサイト鞘に消えていた運転資金も、質の悪い売上だけ計画的に減らすことができれば返ってきます。値引きで売上を維持していた場合などは、値引きしなければ売れ無い分の売上が減少しますが上手くいけば質の悪い売上だけが減り、顧客に配っていた利益がそのまま手元に残ります。資金繰りが苦しいときに「売上を減らすなんてとんでもない!」と意外に思われるかもしれませんが、慎重に戦略的に行えば、敢えて部分的な売上を捨てることが有効な場合も出てきます。
最終的には財務収支の見直し
ここまでやれば大抵の場合、黒字化します。ただ、それをやり尽くしてもなお単月の収支が成り立たないのであれば、リスケジュールや資金調達といった財務収支により経営を成り立たせる事となります。
しかし、財務収支により営業収支を補完することには限界があります。そもそも営業収支が成り立っていなければ金融機関は資金を貸してくれません。(コロナ禍融資、セーフティーネット貸付、有担保貸付などはチャンスがあります。)
貸してくれないならば、資金留保により実質の調達と同じ効果があるリスケジュールをせざるおえなくなります。一度リスケジュールを金融機関へ申し入れますと、新規の調達は難しくなります、そのため会社の財務が危機に瀕した場合は、新規の調達余地が本当にないのかの?改めて確認をする必要があります。結果として、万策尽き調達余地がないとなれば、調達できない会社の財務戦略としてリスケジュールには大きな効果があります。
事業撤退も含めた戦略的な決断をサポート
営業収支は検討した、財務収支も対策したとなるとその先には考えることは、そもそもその事業が成り立っているのかどうかという根源的な問いに向き合わなくてはいけません。
収支が成り立たない要因は、粗利率が低いこと、もしくは粗利額が足りないこと、両方の複合要因のケースもあります。部門別で事業単位での見直しを検討し、撤退もしくは事業売却の検討も必要となります。
事業再生においては増収増益が唯一の解ではないケースがままあります。貸借対照表と損益計算書、資金繰り表を同時ににらみながら検討をする必要があります。
事業再生コンサルタントに依頼する意味があるとすれば、上記のことを同時並行的に考え対策を打っていくことだと思います。多くの戦略コンサルタントは、資金繰り実態を踏まえて、選択できる選択肢が限られるという現実を無視していることがあります。社長にとって「それができれば苦労しない」「やれるもんならやってみろ」「そんなことはわかっている」と感じさせる理由は“そこ”にあります。
一つ一つが正しいことでも、“合成の誤謬”は起こります。毎日、非日常の世界で事業再生に取り組む事業再生コンサルタントの言葉の中には、意外な対処方法を見つけられると思います。
やれることはやり尽くしたと感じましたら、ぜひご相談下さい。