事業再生はいつからレポートごっこになったのか?
1.経営危機だ専門家を雇おう!
あなたの会社に経営危機が訪れ、事業再生を志した時、事業再生に精通した専門家を雇うことをお勧めします。
事業再生は、法律、財務、経営に精通し、危機において経営改善を実行する事に手慣れている必要があります。事業再生時は資金繰り危機がセットであり、悩んでいる時間は無いのです。
多くの場合、短期決戦となり取組が奏功し、経過を管理することとなっても3年から5年もあれば良い結果も、悪い結果も確定します。
その為、社内に高度な人材を採用しても危機への対処だけでは持て余しますし、終わったからと言って解雇するわけにもいきません。
危機に際して迅速にそのような人物を採用できる訳ではありません。能力のある方でも、業績の悪い会社をより好んで入社することはめずらしいからです。
結果として、事業再生に際しては外部専門家を雇うことが理屈に適い、採用経費も掛からず、適切な人材に出会うまでの人材コストの重複も掛からない、そして何より迅速です。
私が事業再生の危機に際して、認定事業再生士がコスパが良いとお勧めする理由です。
2.どんな専門家が事業再生を得意とするのか?
事業再生に手慣れた専門家といっても様々な経歴の方がいます。弁護士、会計士、税理士、中小企業診断士、行政書士、司法書士、不動産鑑定士など様々な資格を有した方が、それぞれの資格を背景にし得意分野から事業再生に立ち向かうべくアプローチします。
あなたが事業再生のために会社を再建する実行支援を求めているのであれば、そのど真ん中の専門家である認定事業再生士をお勧めします。
認定事業再生士以外でも、“実行支援”・“伴走型支援”・“ハンズオン型”と言った言葉で事業再生において成果にコミットしてくれる、専門家がいます。そのような専門家の方を選択されるべきだと、ご注進致します。
鳥倉が事業再生の仕事をしているのは原体験が強烈だからです。
若者の好奇心で妻の実家を再建へ負債117億なんと売上3億。
民事再生で負債を圧縮することとなりましたが、お願いした弁護士と会計士が何を言っているのか全くもって意味不明、理解不能でした。
結果として、弁護士、会計士のおかげさまで、再生計画は承認され計画を実行するフェーズにたどり着く事ができました。「この通りやれば良い」と渡された計画書で絶望したことありますか?私はあります。
売上増えてるけど、どうすれば良い?
利益率上がってるけど、仕入先や社内は協力してくれるの?
年々増えていく返済目標を誰が実現するのか?計画を通すためとは言え、実践する人が使える内容であるべきだし、使えるように計画策定時点から関与していなければ、あきらめの気持ちが生まれます。結果として計画があることによる害悪があるのです。
ただただ、計画の実行を任される。専門家は入り口までの道案内で
「債務は減らしておいたんだから喜べ、後は任せたぞ」
と言わんばかりです。多くの専門家は入り口までなのです。
その仕事に価値がないとは思いません、結果も出ています。
ただ、債権者と合意した計画を実行する支援はしてもらえません。
この強烈な心理的ストレスを私は経験し、同じ経験をする人がないように事業再生の中でも実行支援を仕事としています。
3.計画策定を事業再生と呼ぶのか?
私は士業が経営改善計画書を完成させて、
提出することを事業再生とは言わない、と考えています。
クライアントの利益が改善され返済原資を確保すること。
会社に内在する問題が解決し、健全に会社が回り始めることを
事業再生というのだと信じています。
今は「事業再生をやっています」とおっしゃる専門家も詳しく内容を聞くと
計画策定支援であります。レポートごっこが事業再生と言われるようになっていて、実行支援の為に事業再生を志した私としてはさびしい限りです。私が事業再生の世界で命を削り取り組んできた、魂が奮える、愛する事業再生はどこに行ったのでしょうか?
事業再生がレポートワークになっている現状があり、その弊害があります。
その弊害は、金融債権者(銀行、信金、信組、保証協会など)や再生支援協議会がレポートを欲する事に起因していると私は考えます。
事業再生は窮境状態(どうにもならない苦しい立場)にある会社を再建するためにあり、借金が返せない状態にあります。その為、債権者である金融機関が重要なステークホルダー(利害関係人)となります。
再建に挑む会社は、いわば「まな板の上の鯉」であり生かすも殺すも債権者次第である事は事実です。
その為、経営改善計画書は債務者(再建に挑む会社)にとって「会社を建て直す手引き」の側面と、債権者(金融機関)にとって「会社を理解して納得の上、支援するための材料」の側面があります。
この2つの機能を1つの資料に盛り込んでいます。さらにはこの1つの資料を作るためにデューデリジェンス(DD)と言われる専門家による詳細な調査報告書が添えられることもあります。
この計画により、債権者は実質的な債権放棄をすることもあり、不良債権に対する引当の根拠となり、債務者区分を検討します。また実態バランスシートや清算貸借対照表を元に過不足のない支援内容を検討します。
債権者の利益や被害金額(不良債権の引当必要額)に直結する為、錯誤が許されず、結果として網羅的な資料を求め、好み、欲します。その為、分厚くなります。
重要なステークホルダーの要求によって、必然的に資料は専門的で分厚いものになります。ただ、それは本来、計画にとっての一側面に過ぎないはずです。もう一つの大事な側面が忘れられています。
債務者側が再建するために役立つ経営改善計画書が本来のあるべき姿なのです。というのは債権者にとっても、計画書に記載された目標の達成により再生が実現されれば、成果を共有できるからです。債権者にとっても、計画が予定通り推進しない場合は不利益を被るのです。
ただ、その分厚い資料を使いながら経営再建できるでしょうか?100ページも200ページもある事はめずらしくなく、専門的な内容です。専門的であるが故に、再建に取り組む社長自身が作成することもできないボリュームです。社長自身が自分で理解し、作成できないものを頼りに、その内容を実行する事ができるでしょうか。
網羅的である事を放棄すれば、ポイントは10枚にも満たない。
結果として専門家は高いお金をもらって、経営者に意味不明なものを作っていることとなります。作成費用の負担は一部公的な助成もありますが、債務者企業が支払う訳ですから、依頼者が理解し使えないものができあがると言うことは、もはや利益相反レベルだと私は思うのです。
再生現場では、資金的にも人的にも余裕がありません。
網羅的に問題を指摘され、それを真面目に改善をするため一気に着手するとうまくいきません。会社や現場には、社長の意思を超えた状況が存在します。社内の協力を引き出すこと無く改革に成功する事はありません。網羅的に課題に着手すると猛烈な反発に遭い、反対者を理由に改革は成功しないのです。
また、制約理論(TOC)は事業再生に大変役立つ原理原則であり、指摘の通り
ボトルネックは移動する。1つの課題が解決すると新たな課題が出現します。入口で網羅的に指摘した課題が1つ前進した後も、優先順位の高い課題であり続けるとは限りません。
成功する改善活動とは、優先順位1位の問題が解決するまでやる。そして終われば次に優先順位が高くなった課題へ着手する。その連続こそが再生への近道なのです。1つ1つの成功や成果に共感して、初めて社内の多くの人材の協力が得られるようになるのです。
分厚い資料(経営改善計画書)は知識の無い方を、知識量と資料のボリュームで黙らせるかのような仕事です。それは債権者の要請により必要な要素でありますが、上述のように成功する事業再生を推進する為に必要な対話を促進したり、組織の人間が抱く疑問を1つ1つ丁寧に解消する為のものとして使えません。分厚い資料は、そびえ立つ壁のようであり、あたかも債務者を黙らせる為にあるかのようです。誰のため?に存在するのでしょうか。
4.社長に寄り添う再生支援のあり方
弊社は再生支援としてセカンドオピニオンもご提供して参りました。その為、何百万もする経営改善計画書をたくさん見てきました。
200ページとかあったりもしますが、優先順位が書かれているものを見たことがありません。網羅的に指摘された改善が必要な事項を、どのように対応したら良いかの手順的な内容は書かれていないことがほとんどです。
失礼な物言いをすれば、その計画書を作成した本人は計画策定が仕事であり、実行してその成否にコミットする気が無いからです。
あなたの言う通りにやったけど、上手くいかなかったじゃ無いかと言われないように、実行段階の詳細については踏み込まず、核心をぼかしていると言わざる終えません。問題を問題だと指摘される、しかも網羅的に指摘される。社長は、よしやるぞ!となりますか?問題の指摘は、実行可能な解決策の提示とセットであるべきなのです。
経営改善計画書には2つの側面がある申し上げましたが、いつの頃からか専門家は債権者だけを見ているように感じます。最近の経営改善計画書は債務者である会社を再建するという目的ではなくなってきています。
重要なステークホルダーである金融機関をまとめるための、経営改善計画書には重要な意味があります。ただ、その面だけでは片手落ちです。
経営者の再建に挑む情熱に火をつけ、実行できる経営改善計画書を目指しましょう。その為には、あまりに膨大な資料を作成する事により社長の主体性を阻害してはいけません。社長をあまり馬鹿にしない方が良いです。社内の問題点を社長も十分に理解しています。
問題が入り組んで、あちらを立てればこちらが立たずのパターンが多いです。特に金銭問題や、連帯保証問題が必ず絡みますので社長も自分自身で言えないこと、やれないことが多いのです。
また解決する資源(人的、金銭的、ノウハウ、法的な知識)がないのです。この点は、専門家が大いに実行支援できる所なのです。
それを分厚いレポートで指摘して、計画は策定した、債権者も合意した、あとはあなたが頑張る番だ、と社長を突き放しても現実は1ミリも変化しません。
人より多くの才能に恵まれ、知識経験に富む専門家は、
苦境にあえぐ社長の為に問題解決の支援をして頂きたいと思います。
鳥倉は事業再生に関わり17年の月日が経ちました。専門家として事業再生に向き合う中で感じた問題点をわかりやすく指摘しました。
結果として、過激な表現となっているかもしれませんが、私は「やさしい事業再生」の実現を目指しています。事業再生は命の問題です。自身で解決できない問題に苦しむ経営者の命が掛かっています。その理念のために必要な事と思い、記しました。
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