酒と音楽~ライブハウスの今~Take out your story 番外編 vol.3
実際にBEERHIVEさんのライブにお邪魔したのは9月のことだったのですが、そこからまたご縁があり、野中聡さんのライブに再びお伺いすることができました。
しかも西荻で!
久しぶりに聴けた、生「ダメ人間のブルース」。沁みました。
実は、この曲は今の野中さんのスタイルが出来上がるきっかけとなった曲。バンドのメンバーが辞めてしまい音楽活動ができなくなった時に、メロディと詩が自然にできたそうです。
「僕はダメな人間」と大声で歌っていいのか、最初は迷いもあったそうですが、一度歌ってみたら周りからの評価も高く、それからは吹っ切れるようになったんだとか。その後、野中さんの名曲、「おっぱい」も生まれました。
年始にまた配信ライブをしたいんだよね、というお話から、話題は早稲田RiNenさんのお話に。野中さんが配信を始めた頃のお話もお聞きしました。
「元々、4月に『酒と音楽』のライブをすることは決まっていたんだよね。緊急事態宣言が明けて、みんなライブができませんってなった時に、最悪ワンマンでもやろうと思ってて。そしたら2人出てくれるって人が出てきて、じゃあ配信でやろう、って。お店としてどうなるか分かんないし、俺らも分かんないけどとにかくやろう!って。」
「どれだけ利益になってるかは分かんないけど、何もしないで家賃だけかかるよりは、2、3人でも演者がいて、ライブして酒が出ればいいかなと。後は補助金で何とかつないでもらえればって、そう思ったんだよね。」
「中でも俺1番ビール飲んでるんだから!」と笑う野中さん。確かにライブ中、野中さんめちゃくちゃビール飲みます。
「酒と音楽は切り離せないよね。こうやって飲むビールが一番うまい!」と言いながら、ライブ中も本当に美味しそうに飲む。飲んでしっかり歌うからすごいのですが。
「コロナ前から月1でライブはやってて、その後も変わらずライブができてる事が本当にありがたいよね。」と。
野中さんは今月も精力的にライブを行っておられます。
一方で、「月1くらいでツーマンでやってくれる、野中君みたいな人はいないですよ。」と話してくれたのは、前回のライブの記事でご紹介しました、早稲田RiNenの藤川さんです。
早稲田RiNenは元々、池袋の鈴小屋(りんごや)というライブハウスが閉店した後にオープンしたライブハウスです。
藤川さんは、約12年前に、オープンのタイミングで先輩から誘ってもらったことがきっかけで、鈴小屋に勤めることになりました。「昔から音楽が好きでいろんな場所に遊びに行ってたんですよね。音楽が好きだから今もやってます。ライブハウスやってるって、そこしか理由ないっすもんね。」と言います。
「ライブハウスっていうのは、一般の人から理解されづらい場所ですよね…。普通の人がふらっと来るところじゃないし、閉鎖された空間なので。」
RiNenでは、現在は週末の金土日をメインとして、ライブとYouTubeでの生配信を同時に行なっています。出演者は一度に2組まで、入場人数は15名を制限とし、無観客で配信のみのライブも行っています。
「店としての方向性が変わりましたよね。前は普通にライブして、お客さんをぱんぱんに詰めて、お酒を飲んでもらって売り上げを立てるっていうスタイルだったので。うちもMAXで100人は入る場所だったので、店の売り上げはかなり下がりましたね。常連さんは今でも時々来て飲んでくれますけど、会社からNGが出たりして、来たいけど来れなくなってる人もいるので。」
「リアルにお客さんに来て飲んで行ってもらう、が手っ取り早い方法ではあるんです。ライブハウスの醍醐味は生で音を浴びるっていうところですし。配信も手数料がかかるし、すぐお金が入るわけでもない。」
「緊急事態宣言の時は、外にも出ちゃだめな空気だったので、家にいても何もすることがない。配信しかやれることがないなと。それ以外のことは思いつかなかったです。YouTuberとかが出てきて、みんなが自分の番組を持てる時代になってきているので、タイミングは良かったのかもしれませんね。」
まずは仕事用のPCとカメラ一台を使って始めたそうですが、始めたばかりの頃は失敗も多かったと言います。
「最初やってみたら事故りまくって、俺たちには無理なのかなって思いました。大きいライブハウスとかは、機材に初期費用かけて配信頑張っているところもあるんですけど、自分たちは今そんなにお金をかけられない。詳しい人に相談してみたら、機材を貸してあげるよって言ってくれて。」
今RiNenで配信に使用している、ローランドのスイッチャー、キャプチャー、動画用のPC、カメラも全ていろんな方が貸してくれているものなんだそうです。
「4月から野中君のライブ配信が始まって、実地で訓練、勉強させてもらいましたね。いろんな繋がりの方に助けていただいて、徐々に徐々にクオリティが上がってきた感じです。せっかくライブが良くても、変な映像をとっちゃったらミュージシャンに迷惑がかかってしまうので、そういう意味では責任は増してます。音とシンクロした映像と音響を一緒になって作らないといけないので、そこは面白いなと。」
撮影機材だけでなく、音響設備にも変化がありました。
ライブの音だけでなく、配信用の音を作らないといけないため、今までよりもリハーサルが大切に。リハーサルで音の確認を何度もしていたのもそのためで、生の音の調整だけでなく、同時にテストチャンネルで配信上の音響の調整もしています。
「そこにあるのがエアーマイクと言って、空間音を拾うマイクなんです。普通のケーブルラインを通して出る音だけだと、CDを聴いてるみたいな寂しい音になってしまうので、ライブ感を出すために、両方の音をいい感じのMIXにしてます。」
「4月とかは、投げ銭もかなり多くて…言うなればカンパですよね。とりあえずやってるだけで褒めてもらえてた感じでしたね。でも今はクオリティを求められてきていて、投げ銭もシビアです。ちゃんとした配信をしないと投げ銭も入らなくなってきています。」
「飲食店の方で言う、僕らのテイクアウトは配信ということですよね。配信をやらないと生き残れない時代だと思います。設備とかブッキング力で配信に差がついてくるから、今はイベントを制作して、ブッキング制作して、お酒を作りながら配信して、という仕事の流れがスタンダードになってきました。」
最後に藤川さんに、これからについて思うことをお聞きしました。
「コロナ以降、状況を見つつ、それに合わせるしかないという感じでしたけど…。でも、配信をやっていて、今まで東京に来ないと見れなかった、ツアーでないと見れなかった地方の方が、配信を見れてうれしい!と言ってくださったり、チャットで直接つながることができたりして、そういう意味で良かったなと思います。状況が落ち着いても、配信はずっとやっていくんじゃないかなと。」
「大変だけど配信は、やっていて楽しいし、この新しい状況を楽しみつつやってます。久々の人から連絡が来て、RiNenで配信やりたいって言ってくれる人も増えてきているし、それはうれしいですよね。」
「新しいことをやるのはおもしろいし、結果として新しいことに挑戦するいい機会になったのかなと思っています。」と笑顔で仕事に戻っていかれました。
今回、“ライブハウス“にフォーカスし、3回にわたって、いろんな方にお話をお伺いしてきましたが、何より印象に残ったのは、お話ししてくださった皆さんの表情でした。
今回のコロナの打撃を受けた業種はたくさんありますが、中でもライブハウスほど難しい立場に追い詰められた業種は類を見ないのではないかと思います。音楽活動をされているミュージシャンの方達もそうです。
それでも皆さんの表情は全然暗いものではなく、むしろエネルギーに溢れていて。現状とこれからを見据えた上で、今と未来の自分たちにできることを粛々と遂行しておられました。しなやかな強さとたくましさが、そこに。
このシリーズを通して、全ての人がライブに行くべきだとか応援するべきだということを言っているわけではありません。
ただ、私たちが知っていると思っている世界や事象は、現実のごくほんの一部でしかないということを、頭の片隅に置いておく必要があるのではないかと感じたのでした。
打撃を受けたのは飲食店の方ばかりではない、ライブハウスの方達も、さらに私たちのまだまだ知らない業種の方達も、今なお闘いの最中にあるのかもしれない。
もしそういった、自分の知らなかった事柄に何かのきっかけで触れることができたなら、迷わず積極的に知っていきたい。
知ることから、きっと全てが始まっていくと思うから。
この記事が、もし読んでくださったあなたの、その“きっかけ”になってくれたらうれしいです。
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