[読書記録] 潜水鐘に乗って (ルーシー・ウッド 著)
静かなファンタジー短編集。目に映し出される風景は海の深いところや降りしきる雪の中、静かな森の中など、青や白、緑などの単色が多くて、単色だと私が感じるということもあって静かに感じるのかもしれません。
全編にわたって、静かで美しい寂しさに満ちているように思います。読者である私から一方的に見える寂しさですが、主人公はだれも「寂しい」とは感じていなさそうだ、というところもこの本の特徴なのかもしれません。
例えば、石になってしまうリタだって、身体はどんどん重くなって行くけれど、首も回らず振り返ることもできなくなった時、むしろあたたかい気持ちに包まれていたりするのです。
他人が思う寂しさは、本人にとって寂しさや悲しさだけではない何かがあるのかもしれません。
または、人が自分のことを寂しいとか可哀想だと想像しているということを知ってしまった時、はじめてそれを自覚するのかもしれません。
ただ、ルーシー・ウッドさんのお話の中の人々は、自分では必ずしも悲しいとか寂しいなんて思っていないかもしれない、そう思った時、一人では感じることのない孤独や寂しさは、少し、美しいように思いました。
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