みんな犬になろう
たまに自己肯定感が猛烈に下がるときがある。
『夫は仕事してる。娘は学校。わたしだけ仕事もせずにずるいんじゃないか』
仕事は2度としたくないと思ってるし、夫のおかげで専業主婦ができている今に感謝しつつもっと楽しめばいいのに、その自分の立場に罪悪感を感じる時がある。
こんな毎日でいいのか、わたしだけサボってるんじゃないか、
自分だけ楽してるんじゃないか、
命をダラダラ使っていいのか、いないほうがお金もかからないしいいのでは?
ふとした瞬間にそう強く思う。
また今日もそれを思いながら、寝ている犬をボーっと見ていた。
『そうだ。自分のことを犬だと思おう。』
人間だと思うから、いけないんだ。
犬だと思えばいいんだ!
わたし、犬なのに食器洗ってる。やばい。すごい。
わたし、犬なのに便座でトイレできる。ペットシーツにしてない。やばい。すごすぎる。
わたし、犬なのに掃除機してる。すご。えらい。
わたし、犬なのに犬の世話してる。ワンランク上の犬だわ。すごすぎる。
わたし、犬なのに車の運転できる。やば。頭良すぎる。
わたし、犬なのに買い物できる。お金とかわかる。やば。すご。
人間として最下層にいたはずの自分が、犬になった途端、サイコッチョーな犬になれる。
こんな犬他にいない。いるわけない。
ん、いるかもしれない…
わたしはスマホを出して調べた。犬なのにすごい。
Google検索
『わんわん』
わたしを脅かす存在。わんわん。
あいつはどこまでできるのだろう。
ガチャピン並みの能力があるとしたら、わたしは負けてしまう…。
しかし、わんわんのことで新たに得た情報が『さいたま犬』ということしかなく、わたしはスマホを閉じた。
武尊vs天心
わたしvsわんわん
と言ったところだろうか。
わたしの犬としての生活は数日続いた。
犬になる前のわたしとは明らかに変わったのである。
SNSを見ていて、落ち込んだり悩んだりしている人を見つけると、こう思う。
『犬になればいいのに』
犬はいい。犬になろう。
お前も犬にならないか?
失敗してもしょうがないさ。犬なんだもん。犬にしてはよくやったよ。二足歩行できてるだけですごいことなんだぜ?
テスト期間中の娘が寝ている犬を見て
『いいよなぁー犬は』と言った。
わたしは心の中で『うん。犬はいいよ。すごくいい。君もなりなよ。』と思っていたのは内緒である。
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