とりあえずのとり

35歳/高校生の娘と怒らない夫と犬と暮らしてます/平成に産まれたかったと思わなくなる日…

とりあえずのとり

35歳/高校生の娘と怒らない夫と犬と暮らしてます/平成に産まれたかったと思わなくなる日はいつ来ますかね/家族のはなしを主に書きます!

最近の記事

洗濯物

『朝はとりちゃんと一緒に洗濯物を干したりしたいんだよ。』 単身赴任で離れて暮らす夫がそう言った。 洗濯物かよ!と思ったけど、なんだか嬉しかった。 離れて暮らすようになってからあっという間に半年以上が経った。 夫がいないことに慣れたけど慣れてないような、毎日。 そんな中変わらないのは、毎朝の夫からの『大好きだよ』のLINE。 付き合っているときから毎日かかさず送られてくる。 それにわたしは笑顔のスタンプだったりgoodマークのスタンプだったりを気分で返す。 そんな風に変わ

    • かゆいひと

      わたしはレディースクリニックに来ていた。  診察を終え座っていると、看護師さんがわたしの隣に座る女性に声をかけた。 看護師さん「◯◯さん、最近体調どうですか?」 見知らぬ女性「つわりで気持ち悪くて…ほとんど食べられなくて…」 近くに座る無関係なわたし(つわりかあ‥きついよなあ‥) 少し経ってから、わたしは別の看護師さんに声をかけられた。 看護師さん「とりあえずさ〜ん。」 私「はい。」 看護師さん「今回は隠部が痒いとのことで!(なんかすごく元気)」 近くにいる無関係な

      • みんな犬になろう

        たまに自己肯定感が猛烈に下がるときがある。 『夫は仕事してる。娘は学校。わたしだけ仕事もせずにずるいんじゃないか』 仕事は2度としたくないと思ってるし、夫のおかげで専業主婦ができている今に感謝しつつもっと楽しめばいいのに、その自分の立場に罪悪感を感じる時がある。 こんな毎日でいいのか、わたしだけサボってるんじゃないか、 自分だけ楽してるんじゃないか、 命をダラダラ使っていいのか、いないほうがお金もかからないしいいのでは? ふとした瞬間にそう強く思う。 また今日もそれ

        • 父の日

          今から16年程前のこと。初めての保育参観日があった。 参観日だからといって娘がなにか特別なことをするわけでもない。娘はまだ生後半年の赤ちゃんだ。 入園式以来の保育園の中。 娘のいる部屋に入る前に、廊下に貼られている展示物をなんとなく見ていた。 そこには色画用紙で作られた男の人がずらりと並んでいた。 男の人の胸あたりに書いてある「いつもありがとう!」という文字を見てわたしは気づいた。 「父の日」に。 うちには父がいない。娘が産まれる前から父はいない。しかし、色画用紙で作られたお

          『ワカリマセン。』

          『ピンポーン』 20時頃、玄関のチャイムが鳴った。 こんな時間に誰だろう?よっぽどな用事なのか?とわたしは何の警戒もなく玄関の扉をガラガラと半分程、開けてしまった。 そこには見知らぬ男性がいた。 男性は『わたくし◯◯(有名な会社)から委託をうけているものなのですが』と首からぶら下げた名札を見せ、自分の名前を言った。 男性は続けた。『数日後に電線の工事をするので、ちょっとお聞きしとかないといけないのですが…おうちのWi-Fiはどちらの会社のものを使っていますか?』 ん?工事

          『ワカリマセン。』

          食にまつわるエトセトラ

          お寿司 職場で寿司をもらった。これぞまさに「棚からぼた寿司」である。 前日の夜、布団の中で「腹いっぱい寿司が食べたい」と十回位まあまあでかい声で神に祈った甲斐があった。願い事がこんなAmazon primeみたいな速さで叶うとは。 寿司は職場のみんなをご機嫌にした。今日は苦手なあの人の顔色を伺うことなんかしなくてよいのだ、と思うと心が軽くなった。 帰宅して夫に寿司を見せびらかした。夫は「おお…!寿司だ!よかったねぇ」と期待通りのリアクションをしてくれた。夫は回転寿司屋でバイト

          食にまつわるエトセトラ

          6.22 スースー

          娘と夕飯前にダラダラしていた時のお話。 わたし「ねえ、チョコミントアイスって食べたことある〜?」 娘「ある〜。小学生んとき、はまって食べてたなあ〜」 わたし「やっぱり?あんたが小さいときなんか食べよったような記憶が薄っすらあったとけどさ〜。お母さん食べたことないとけどさ、あれって美味しいと?」 娘がチョコミントにはまっていた小学生の頃にもしたであろう質問を、記憶がないのをいい事に初めてみたいに聞いてみました。 娘「美味しいっていうかスースーする」 わたし「あ〜。お

          ギョギョっとした話

          寒空の下、犬の散歩をしていた。 いつものように近所の魚屋さんの前を通っていると、店の中にいるおばあちゃんと目が合った。おばあちゃんはエプロンをつけたまま店から出てくると「あら〜!!」と優しく言いながらうちの犬に近づいてきた。おばあちゃんとはこの日初めて会ったのだが、ほんわかした雰囲気とクシャっとした笑顔を見てわたしも犬も「この人は安全だ」と感じ取った。 おばあちゃんはしゃがみ込み「あら〜!ふかふかしてるわね〜!」と言いながらうちの犬を嬉しそうに撫で始めた。「すごいふかふかだわ

          ギョギョっとした話

          パンまつりは突然に

          数年前、わたしはレストランで働いていた。 この店では注文受けをシェフに伝える際、数をイチでなくワン、ニでなくツーと言う決まりがあった。シェフが決めたらしいが、今までそういう小洒落た店で働いたことのないわたしにとって、少しだけ気恥ずかしい決まりでもあった。 客席から厨房へ向い、シェフに注文を伝える。「魚ワン、肉ワン、パスタツーです!」聞き取りやすくハキハキと。毎回ちょっとだけ緊張する。 ランチはライスかパンか選べるようになっていたので、パンが何個いるのかまでをシェフに伝える。

          パンまつりは突然に

          芋を喰らう日々

          芋が好きだ。芋が好きだ。何回言っても足りない。芋が好きだ。 シチューの中のじゃが芋が好きだ。ちょっと煮崩れたくらいのじゃが芋が好きだ。煮えたかどうか食べるときのお玉から出たばっかりの芋が好きだ。 皿の上でドゥクシドゥクシして潰し潰ししたじゃが芋が好きだ。そのまま食べたりご飯と食べたり。ドゥクシドゥクシの芋が好きだ。だいすきだ。 お腹いっぱい芋を食べたい。芋を食べたい。 食べる時は気をつけないと喉につまる。芋は逃げないのに急いで頬張るからだ。芋は詰まる。 さつまいもは気を

          芋を喰らう日々

          俺の飯のはなし

          土曜日の午前11時50分。「ウーバーイーツです。」そう言いながらPCの前で仕事をしている夫の前にインスタントラーメンの入った器を置き、逃げた。 「うわぁ!ありがとう!美味しそう!」とピカピカの声が聞こえる。トイレのドアの前で立ち止まる。夫の顔は見れない。何も知らない夫があまりにも喜ぶのでとてつもない罪悪感を感じ、トイレのドアの前から夫の部屋の方を向き「本当はタベカケーツでした…」と白状した。 「タベカケーツ?食べかけってこと?」と聞かれ、わたしは黙った。なぜわたしは一瞬嘘をつ

          俺の飯のはなし

          やっぱりサイボーグになりたい

          除菌ウェットティッシュが好きだ。使いすぎてすぐになくなる。買いに行くのがめんどうなのでいっそのこと除菌ウェットティッシュを太ももに内蔵されたサイボーグにしてほしいと思った。戦闘力には欠けるが、戦いが終わり血やら土やらで汚れた仲間達にそっと除菌ウェットティッシュを渡してあげたい。 事前に美容室でカラーと髪質改善トリートメントを予約していた。これでゴワついた髪がツヤツヤのサラサラになればいいな〜とひっそりとワクワクしながら今日美容室に向かった。 初めて行った店だったのだが外装も

          やっぱりサイボーグになりたい

          「クヘェッェェーー(涙)」

          飲むと「クヘェッェェーー(涙)」となる飲み物がある。WILKINSONのジンジャーエール(辛口)である。 飲食店でウエイターとしてバリバリ仕事をしまくっていた時代にわたしはコイツと出会った。初めてコイツを飲んだときの感想はまさに「クヘェッェェーー(涙)」だった。 食後のドリンクにコイツを注文するお客様は多く、その度わたしは「クヘェッェェーー(涙)」のやばさを伝えようと「辛味が強めですが…」とお客様にやんわりと警告していた。ちょっと洒落た店だった為なるべくお上品にしなくてはな

          「クヘェッェェーー(涙)」

          セーラームーンとわたし

          わたしは俗に言うゆとり第一世代であると同時に、セーラームーン世代でもある。 ありとあらゆるセーラームーングッズを持っていたが、やはり一番大切にしていたのは、セーラームーンの着せ替え人形だった。毎日毎日そのお人形で遊んでいた。ずっとずっとセーラームーンと一緒にいたかったが母から「ばあちゃんが帰ってくるまでに片付けなさい」と言われていたので、渋々その言いつけは守った。ばあちゃんが仕事から帰ってくる夕方5時をすぎると大好きなセーラームーンとはお別れである。 そんなある日猛烈な欲求に

          セーラームーンとわたし

          まえばまえば

          洗面台の前で夫がうがい薬のカバみたいに口を開けてアガアガしていた。おかしな姿に笑いながら「なにしてるの?」と聞くと「顎をつった」と。なにやら普段から口を大きく開けたら「がこ」っという不吉な音がするらしい。そういえば顎関節から音がするのは噛み合わせの状態が関係するとかしないとか「あの先生」が言ってたなぁと思い出す。 「あの先生」とは昔勤めていた飲食店の常連だった歯科医院の先生のことだ。先生はとても優しく、店にくる他のお客さんの歯の相談にいやな顔ひとつせず丁寧に対応していた。そし

          おおかまちと娘

          「おおかまちも連れていっていい?」公園に行く準備をしていると娘が言った。「いいよ」そう我が家にはお父さんはいないが「おおかまち」がいた。 それは娘が言葉を覚え始めたころ。わたしは実家で暮らしていて、玄関には母が懸賞で当てた30㎝くらいのキューピーちゃんが飾ってあった。 それは大事に飾られていた。わたしには賞味期限が切れる前日のカチコチのバームクーヘンしかくれない母だが、孫のかわいさに勝るものはなかったらしく母は人形遊びをしていた娘のもとにキューピーちゃんを連れていき、「こん

          おおかまちと娘