【詩】『シュガー・ゴースト』
角砂糖が歩く。
歩いた方がいいらしいので歩いている。
走ってもいいらしい。
走り疲れた角砂糖が眠る。
眠ってばかりいると怒られるらしい。
食べてばかりいても駄目らしい。
角砂糖は自分から溶けるといけないらしい。
自分から溶けた角砂糖は悪い子だと言われる。
角砂糖は誰かにコーヒーや紅茶の中に落とされるのを待たなきゃいけない。
勝手に自分から溶けてはいけないらしい。
角砂糖が角砂糖を溶かすのもいけないらしい。
角砂糖に許されているのは角砂糖が角砂糖を作ることだけ。
角砂糖は水に溶けたらなくなってしまう。
でも本当は目で見えなくなっただけで、角砂糖は細かい粒子になって水の中を漂っている。
歩く角砂糖と溶けた角砂糖は違うけど、同じだと思った。
それはみんなには内緒にしないといけないらしい。
世界が紅茶になればいい。
コーヒーでもいい。何でもいい。
とにかく、そこに上手く溶け込めるかが肝心。
わたしは砂糖になりたい。
そこに上手く溶け込めるようになるため。
ついでに跡形もなく、さらっと溶けてなくなってしまいたい。
けれど砂糖はそこにいる。
目には見えなくても、舌が甘く感じれば、消えてなくなったりはしない。
姿の無い亡霊は、そこにいる。
ざらついた後味を残したまま。
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1年以上前に前半と後半で別々に書いていたものですが、似たような感じだったので合体させました。
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