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[小説]墓場まで持っていく 1

雨が降る、雨粒が光を反射する。キラキラと光る世界、どんよりとした湿気、それさえ人生に色を与えてくれる。


 なんとなく私はペンを握り、ギシギシと音を耳障りな音を我慢しながら椅子に座る。ペンを握るのはいつぶりだろう。日数を数えながら、筆を走らせる。久しぶり書いた文字は、別人の書いた文字のように見慣れない違和感があった。高校を中退してから、私は何も進歩していなかった。最後に書いた文字は、学校で受けた最後の授業以来である。

 お母さんへ、ありがとうございました。 かなえ

 小学生が母の日にあげるような内容、でもそれ以上書こうとすると涙腺がもたない。暗いくらい部屋を照らす月明かり。生きた心地のしない、絵のような見飽きた風景を見つめる。死んだ方がいい、自分は死ぬべきだ。そう思っていないとダメなような気さえする。手に持った抗うつ剤と睡眠薬。これがないと私は生きていけない、でもこれがあるおかげで私は死ねるような気もした。薬を大量に飲んだのはこれが初めてだった。手が震えてやっぱり私は死ぬのが怖いんだと実感した。

 日光で目を覚ます、違和感を体に感じながら手に繋がれたチューブを目で追ってここが病院だと気づいた。死んでないことに安堵と自殺未遂をしたことに後悔を抱きながら窓の外を見つめる。
「佐々木かなえさん、起きましたか。調子はどんな感じですか。」
部屋に入ってきた看護師が、私が起きたことに気づいて駆け寄る。
「いい感じです。」
こんな淡々とした返事を一日中かわし続けた。


退院して1ヶ月、私はバイトを始めた。ラーメン店でのバイト、朝早くに起きれない私にとって夕方からの営業のこの店。好都合だった。
「佐々木さん、洗っといて」
「わかりました。」
ニンニクの匂いが鼻腔にくる。帰った後はこの匂いが服に染み付いてるので、毎回母に臭いと言われてしまうのがこの仕事の一番の欠点だ。でも、あの自殺未遂から母は私に優しくなった。いつも私に言っていた、この金食い虫という愚痴、それを聞くたびに死にたくなっていた。でももう今では一切ない。
「ラーメンスペシャル盛り入りまーす。」
店長の掛け声で、一気に現実に戻される。元の高校の学生が、ラーメン店に入る。私はこの男を知っていた。体育祭の応援団長だったはず、名前は覚えていない。彼らは友達と笑いながら、カウンター席に座る。彼は私のことを知らないはずだ。だから大丈夫、そう心につぶやきながら注文をとった。
「俺、大学の志望校の判定良かったんよね、だから泉先生に褒められたわ。」
そんな何気ない、会話に全部の神経が持っていかれた。泉先生、私の担任だった先生だ。呼吸が荒くなるのを感じる、嗚呼、なんで結局悪い方向に行くんだろう。もう怖い、怖いよ。なんでこんなに私は悪い子なんだろう。
「おい、おい、落ち着いて。」
そんな声すらもうただのbgmのように意識に入らなかった。


お読みいただきありがとうございました!!
お蔵入りしていた作品です。自我強めで下手くそなのはご了承ください。
続編は、評価が高ければ投稿しようと思っています(*´`*)


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