Netflix映画 ハンガーゲーム
Netflixにハンガーゲームあるのね。2012年のヒット作だ。当時、やたらテレビで宣伝打ってたなぁ……。
貴族階級と貧民階級に分けられた近未来のアメリカ。貧民階級の人々は各地域ごとに2人ずつ選出し、「ハンガー・ゲーム」に参戦し、殺し合わなければならない。全12地域で、24人が殺し合うハンガー・ゲーム。主人公のカットニスはその中で生き残れるのか……。
というSF設定はともかくとして、アメリカ発のバトルロワイヤルものである。日本では正直なところ、似たような設定のストーリーが氾濫しているので、Netflixで見かけたもののバトルロワイヤルものは食傷気味なので、どうしようかな……とは思った。日本ではこういったストーリー、すでにテンプレート化しているので、設定そのものに新鮮味はまったくない。
まあそれはともかくとして。
本編冒頭。貧民階級の生活が描かれる。お山のふもと、道路も整備されていない場所に、貧相な家がぽつぽつと建てられている。手ぶれの多いハンディカムと、クローズアップ多めの映像。ドキュメンタリー的な印象を狙っているのだろう。
映像はともかくとして、その街に住む人々の顔。いい人連れて来たなぁ。モブキャラ達の顔が、場所を説明してくれている。ただ、全体的に画角狭めなので、場面の広がりはあまり感じない。
そんな街に貴族階級の人達がやってくる。カットニスがハンガー・ゲームのプレイヤーに選出され(正確には妹が選出され、カットニスは代理)、ピーターと共に都市を目指す。
都市の映像に入ると、カメラに手ぶれがなくなり、フィックス、クレーンと動き方が明確になる。建物の様式は壁紙のないコンクリート面剥き出しの壁に、大きな窓。ちょっとコルビジェっぽい印象だが、それ以上に人の生活観を感じさせないというか、人肌を感じさせない冷たさがある。そんな中で暮らす人々は、これみよがしにカラフル、常に仮装パーティー状態。ハレと祝祭。貧民街の光景との落差を作っている。
貧民街はかつてアメリカにもあった貧しき時代、状況を映像にし、都市の光景は極端に“作り物”っぽさを強調している。貧民街に都市の人達がやってくる映像は、若干ギャグっぽく見えてしまうのだが。そういった極端さを作ることで、今という時代とは違うSF空間を作ろうとしたのだろう。
剥き出しのコンクリート面と仮装パーティー状態の人々……この落差で都会の人達の精神的貧困を表現しているのだと思うが、映像としてはあまり華やかではない。SF映画はどんな都市を見せるか、が1つのポイントだが、『ハンガー・ゲーム』の都市は風刺に寄りすぎ、映像作家としての個性が弱く感じられた。
さて、都市にやってきてハンガー・ゲームが始まる……かと思いきや、まだ始まらない。カットニス&ピーターはヒーローとして迎えられ、テレビ出演や、スタイリストや教官との交流が始まる。
次第に都市の空気に飲み込まれていくピーターと、戸惑い警戒し続けるカットニス……。
すぐにハンガーゲームが始まるものかと思っていたが、ゲーム開始は1時間が過ぎたところから。予備知識を入れずに見ているから意外だったが、登場人物同士の交流を大切に描かれる。アメリカ映画でこういうところをもったい付けてキャラクターを掘り下げていく展開は珍しい。
前半ははっきりと見せ場は特にない。SF的な光景に驚きや新鮮味は特にない……ただただキッチュなだけだしで(未来的なテクノロジーを見せる描写がない)。ただ、このワンクッションがあるから、後半に入ってもきちんとキャラクターが把握できる。
前半いろいろあって、やっとハンガーゲーム開始。24人での殺し合いが始まる。
カットニスはリュックを確保したらすぐに森の中へ逃亡。しばし身を潜めて状況を見守る……。
前半部分を見ていて気付いていたけど、アクションにはあまり力はない。アクションの流れはあまりきちんと描かないし、やたらと表情を描こうとする。顔のクローズアップ多め。アクションの凄みとか、緊張感はあまりない。それ以上に物語の展開が重視されている。それぞれの人物がどのように交流したか、展開と関係性のほうに重きが置かれる。こういう描き方はやっぱりアメリカ映画では珍しい。
物語展開はなかなか面白いのだが、その一方で、ちょっと引っ掛かる部分というか……キレイに描きすぎるかな、と思う部分がある。例えばカットニスと一緒に行動していた少女が殺されたとき……見晴らしのいい森の中、カットニスがしばし悲嘆に暮れて、少女に花を添える……。いや、それをやっている間に狙われないか? しかも結構尺を取るし……。
少女が殺される一連のカットの流れがなんとなく一昔前のアニメみたいだ。たまたまだとは思うけど。
アクションがそれほどパワフルではなく、映画的なクライマックスに向かっていく感覚は薄い。あくまでも物語展開のほうが重視されるので、どこかテレビドラマの一気視聴のような印象(あるいは劇場版総集編みたいな感じ)。それはそれで悪くないが。
日本でこういった作品が作られる場合、悲劇的な場面を強調するために、その人物観を無視していきなり主人公を裏切ったり……シーンを過激にするために無理矢理にキャラクターが殺されたり……という展開が日本の作品には多くなっている(で、結局人気絵師のキャラデザと人気声優さえ出ていれば、そこそこ以上の数字が取れるのが我が国の現実だ)。このジャンルは人物を大事にしない。それでこのジャンルには食傷気味になっているのだが『ハンガー・ゲーム』はそこまで酷くはない。キャラクターの個性はちゃんと一貫してくれる。展開にはやや段取りくさい場面が……わざとらしく殺されるキャラクターがちょいちょいいるのが惜しいところではあるけども。
Netflixには2作目、3作目もあるようだ。どうしようかな……。1作目も結構しんどかった。2作目を見るかどうかは、しばし考える。
5月14日
こちらにも同じ記事があります→とらつぐみのつぶやき:Netflix映画感想【5月】