銀河英雄伝説sns

2018年春期アニメ感想 銀河英雄伝説

 『銀河英雄伝説』はタイトルは聞いたことはあるけど、旧アニメ版は見ていないし、原作も読んでいない。「どうやら有名な作品らしいぞ」という、なんの予備知識なし状態で見ている。
 というわけで感想もすこぶる書きづらい。どう書けばいいのかな……?

 私はこの手のSFが嫌い。「この手の」というのはレーザー光線を撃ち合うタイプのSFだ。
 レーザー光線は攻撃時の力感がなく、細いレーザーがぴょーんと当たっただけで戦艦がどかーんと爆破する。ちょっと戦艦の耐久値低すぎじゃないか? その程度で沈むんだったら、そんなでっかい戦艦を用意してくる必要ないんじゃないか(犠牲を無駄に増やすだけ。だったら全てハリボテにして、リアルシミュレーションのお話にすればいい)、なぜレーザー攻撃に対する防御について考えられていないんだろう、と疑問ばかり膨れあがってしまう。耐久力紙程度の戦艦だらけで、「戦闘機」に相当するものがないのも引っ掛かる(ロボットものの場合、人型兵器が戦闘機ということになる)。
 あまりにも描写が象徴的になりすぎて、その戦艦にいるであろう数百の乗組員の死というリアリティも見えなくなってしまう(『銀河英雄伝説」』は今のところ「死」をまったく描写していない)。
 『銀河英雄伝説』は私の嫌いなタイプのSF全載せの作品だが、第1話はなかなか良かった。SFアニメにありがちな疑問は画面を覆い尽くす物量で乗り切る。物量で圧倒して、人間の描写は司令室のタクティクスのみに全振りでそれ以外は描かない。
 やはり人間の死というリアリティはどこかへ置いてけぼりだが……第1話の戦いだけでも何百人死んだんだろう……しかしそこに目を向けられることはない。「それはさておき」と割り切ってしまっている。話の中心はそこではない、とむしろ割り切ってしまったほうが、この作品の場合いいのかな、と気付いて私も割り切ることにした。

 物語は「銀河帝国」ラインハルトサイドと「自由惑星同盟」のヤンサイドの2つに分かれ、主人公を交代させながら進行させていく。原作を知らないので、今のところこの物語がどこへ着地させようとしているのか、まだわからない。
 2話以降、戦闘から遠ざかり、二人の主人公を掘り下げる過去の物語が始まるのだが……。描写がどうも書き割りっぽい。シーンの一つ一つには厚みがなく、世界観に奥行きがない。「それっぽい雰囲気」だけで描かれてしまっている。時々、その場限りの使い捨て悪役が登場するが、描き方がことごとく安っぽい。紋切り型の悪役になってしまっている。わかりやすさを優先させた結果かもしれないが、あれが作品をより安っぽいものにしてしまっている。
 ああ、第1話の迫力はどこへいったんだ……。

 それも仕方ないか……。というのも、描かれる舞台があまりにも多い。新しいシーンが次から次へと出てくる。この数の舞台をきっちり描こうと思ったら、そのぶん設定を描ける能力のある人と、それなりの人数が必要になる。参照にするべき資料も膨大になり、管理が難しくなる。それだけの人材と人員を集めるのはなかなか難しい。
 こういった作品の場合、一つ一つのシーンにどれだけの情報を載せられるか。ぱっと見でクオリティの高さを伝えなければならないし、文化的な奥行きや歴史の傷跡を感じさせねばならない。もちろん舞台が変わればそのぶんの“違い”も表現しなければならない。絵画の面だけではなく、台詞にも相応の厚みと奥行き感がなければならない。
 多様さを描き分けられる人材に、「誰に描かせるか」という采配をきちんとこなせる監督やプロデューサーが必要になってくる。ある部分ではキャラクターよりもそっちのほうがよほど大事になってくる。
 正直なところ、ProductionIGならこの難題を乗り切れるんじゃないか……という期待はした。期待したが……ProductionIGでもダメだったか。このスケールのものを通常のテレビの予算感で描こうというのは、やっぱり無理だよ。
 色んな舞台が出てくるが街の光景……どんな家があってどんな人が歩いていて、何が流行しているのか、過去にどんな歴史があったのか――そういうのが何一つ見えてこない。テロップは使われるが、キャラクター達いる場所が世界観全体に対してどういった場所なのか見えてこない。どのシーンも妙に視野が狭い。どうにも安っぽい書き割りの背景のように見えてしまう。

 舞台の描写はまあ諦めるとして、それじゃドラマ部分はどうだろう?
 引っ掛かったのは第5話、戦没者慰霊祭でおじさんが演説している中、一人席を立たなかったヤン……。それで上司らしき人がすっとんで来るのだが、そこまで目立つものなのか?
 その後、過激な右翼集団に狙われるのだが(席を立たなかっただけで??)、その右翼がたかが庭の噴水くらいで吹っ飛ばされてしまう。おいおい、水圧どうなってるんだ……。

 第9話では会議の場面が流れるが、対話のリズムが悪く、会議をやっている緊張感はどこにもない。まるで学芸会を見ているようだった。会議室そのものも奥行き感のない小さな部屋に机を置いて、おじさんおばさんを数人並べただけ。予算のない映画の書き割りセットを見ているようだ。

 他にも引っ掛かる場面があまりにも多かったが、エピソードナンバーがどこだったかわからないから省略する。どのシーンを見ても書き割りっぽい、段取り臭い、わざとらしい、総じて学芸会演出のように見えてしまう。5分おきに何かしらで引っ掛かる。引っ掛かる箇所があまりにも多くて、憶えきれないほどだった。
 うーん、どうしてこれが語り継がれる作品になれたのだろう……。原作読んでないからどうにもピンと来ない。庭の噴水とか、ああいった描写も原作通りなのだろうか……?
 現在、9話までは見ているのだが、続きを見るかどうかはちょっと考え中。ここまで来たら最後まで見るべきかも知れないが……。

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とらつぐみ
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