スーパー育てにくい子が教えてくれたコト 5
心の限界が来てしまった
退院してからの彼女は、むしろ状態が悪化していた。
寝ないのは相変わらずだったけれど、起きているときの機嫌がすこぶる悪いのだ。
何から何まで気に入らない。
気に入らないと激しく泣く。
何が気に入らないのかわからない。
いや。むしろ何が気に入るのか全く分からない。
そんな調子だったので、私はもちろん、上の子もほとほと困っていた。
ある時は、何か気に入らないことがあったらしく、上の子の腕をあとが残るぐらい噛んだこともある。
上の娘はとにかく穏やかで優しい子。
涙をこらえながら、「こういうことしちゃだめなんだよ」と言って聞かせてあげていた。(怒ることなく言葉で伝える、は私の受け入りだな…)
この時は、学校で腕についた噛み跡を先生に見つかったらしく、危うく虐待疑惑を持たれるところだった。
本人がきちんと妹にやられた…と言ったらしいけど、それもどうなの?って感じだ。
ちょうどその頃は、上の子が小学校に入学していた。
その時の担任がかなり問題のある人で、うちの娘とは相性が悪すぎた。
長女は幼稚園でも「不思議の国の○○ちゃん」と呼ばれていたほど、天然で穏やかな子。
それに対して、まだ小学校に入学したばかりの子供たちに、厳しい言葉を投げつける担任の先生。
あっという間に長女の心は悲鳴を上げた。様々な症状が出てしまっていて、それも対応が大変だった。
その上、下の子は寝ないで暴れまわる。
子どもが寝てくれないということは、それ以上に母は寝不足になる。やっと少し寝ていくれている間にいろいろ片づけなければならないからだ。
わずかな隙を見て、仕事や家事、上の子のケアをしていた。
知らない間に私の心も悲鳴を上げていたらしい。
ある時、してはいけないことをしてしまったのだ。
正直あまりその時のことを覚えていない。
何がきっかけだったのか。
どうしてそんなことを言ってしまったのか。
ただ覚えているのは、娘の首辺りを掴んで揺さぶりながら、
「どうしてそんなことばかりするの? ねぇ?」
みたいな暴言を吐いた気がする。
このことをここに書くのもかなりドキドキしたけれど、書いてみたら少し気持ちが軽くなった。
私の中では首を絞めてしまったような記憶があったんだけど、今こうして書いてみると、そこまではしていなかった気がする。
良かった…
今は私のことをこの世で唯一信じられる存在として認知しているけど、彼女の心の片隅にこの時の記憶が残っているのかもしれない…
ずっとそんな怖れを抱いているから。