とらぶた自習室(4)勉強メモ 野口良平『幕末的思考』第1部「外圧」第3章-5
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筆:栗林佐知(けいこう舎)
2023年1月20日読
野口良平『幕末的思想』第一部「外圧」
第三章「変成する世界像」-5
朝勉強で少しずつ読んでいる、 野口良平『幕末的思考』みすず書房
第1部「外圧」の第3章「変成する世界像」‐5 まで来ました。
(今回からしっかりとブログに)学習メモと、感想、連想、脱線……を書きます。
■ 戦争をはじめてしまう長州と薩摩
時代と格闘する幕末の真摯な群像に出会い、どきどきが止まらないこの本。 とくに、第3章‐3(ポーハタン号・咸臨丸による幕府使節の渡米)には、胸がときめくようでした。
なのに、ここへ来て、だんだんついていけなくなる。
それはひとえに、私が「戦やだ~~」から離れられないから。
しかし、彼らは武士なので戦争が家業だし、この時代に「戦争自体が悪」という思想はなかったのだろうし、今は、真摯な幕末人たちの事蹟を負うのだから、私の感想は置いておこう。
幕府が必死にどのように開国するか、列強に対応している間、 長州と薩摩は、外国と戦争をはじめてしまう。
長州藩は、関門海峡を通る外国商船を砲撃。 薩摩藩は、生麦事件(大名行列を横切った英国人を斬り殺してしまう)の賠償交渉で英国と決裂して開戦。
彼らは「戦争」を選び、しかしそこから列強との新たな交渉の窓口をつかんでいった……。という。
■ 開国の作戦──それぞれの考え
米英蘭仏と条約を交わし、開国を決めた幕府。 ここへ来て、考え行動する幕末人たちは、それぞれに新しい一歩を考え出してゆく。
◎横井小楠の説
熊本出身の学者・政治家横井小楠は、スカウトしてくれた松平春嶽を通して幕府に献策。それが「破約必戦論」。
“今は攘夷か開国かではなく、興国のとき。現行の不平等条約は、不正なやり方で締結されたので破棄。→もちろん列強は怒るだろう。なので「必戦」は覚悟した上で、国内の諸勢力が同じテーブルについて天下の公議を重ね、国是を決め、それを諸国に示して国際会議の場で普遍的な道理に照らして是非をはかる。"
という考え。
(うん、「必戦」以外はよい!)
だが、横井小楠の「破約必戦論」は、幕府(特に徳川慶喜)に拒絶される。
→徳川慶喜の言い分
①必戦というが、戦をして負けたらどうなる?(負けるよ-)
②諸侯会議を開いて、時局のことをまったく判ってない奴が来て変なことを言えば混乱するだけ。(まーわかる)
③条約を結んでおきながら、批判が高まればおたおたするのは天下に対して無責任すぎる。
→横井小楠「慶喜さま、卓見だわ~」と、策を引っ込める。
→けれども、長州の周布政之助、桂小五郎は横井小楠の策に賛成! 「破約必戦論」を聞いた周布、桂は、これまで「条約追認論者」と決めつけていた横井小楠を信頼する。
→「もう幕府はダメかも、諸国のみんなで連携してやろうか、政治を」という気運になってくる。
◎長州藩の動き
吉田松陰の弟子である久坂玄瑞が、京で攘夷派の公家を動かし、朝廷を攘夷派でまとめ、孝明天皇から(京に捕らわれている)徳川14代将軍家茂に「条約破棄交渉をせよ」と命令書を出してもらう。
さらに、生麦事件の賠償問題で困っている幕府をさらに追いつめるため、関門海峡を通る米・仏・蘭の商船を砲撃する。
→ひえ~、やめて~~!!
→4国連合艦隊が報復。惨憺たる敗北
→「今までの軍ではダメ。身分を問わず、みんなで防衛しよう」と、 高杉晋作が、武士だけでなく、身分を問わぬ「寄兵隊」をつくる。
攘夷戦争と同じ頃、横浜から長州人5人が密航留学してる。
◎薩摩藩の動き
生麦事件の賠償交渉を、英国と藩独自でもつ。
→決裂→薩英戦争。「善戦」するが敗北
→終戦交渉の場を利用して、薩摩藩はイギリス相手に幕府を批判。「対日本交渉の窓口は、幕府より薩摩だ!」とアピール。
湾に入ってきた英艦に乗り込んで薩英関係の改善に努力した人も。 五代才助(友厚)、松木安弘(寺島宗則)。
◎勝海舟と横井小楠
幕府から献策を却下されたとき、 横井小楠が、幕臣の勝海舟にぼやいた言葉。
“「攘夷は興国の基」だが、異人をやたら斬ったり「でていけ~」というのが攘夷だと思っている輩が多すぎるので、なかなかちゃんとした攘夷まで行けない。ふう~"
勝海舟の海軍構想と横井小楠の「公共の政」構想は、通じるものがある、とのこと。p62
■ 理屈ではわかるが、なんだかこわい
勝海舟の海軍構想 と 横井小楠の「公共の政」構想は、民主主義国家と国民皆兵制度のことだと思うけど、
すばらしいもの……なのかなあ。
なんか、庶民にとっては、江戸時代の方がいいように思う。
江戸時代、農民・町人は唯一の納税者。武士はその「あがり」で食べ、身分制度の頂点にいた。そのかわり、いざとなったら戦に出て農民たちを守る。
ところが近代、明治以降~ 農民たちは税も取られる上に、兵にも取られて死ななくてはならない。いやだよ~。とられすぎ。。。
それにこのとき、「とにもかくにも(ぶっちゃけ、たとえ植民地になっても)戦をしない」という考えはどこからも出てこなかったのだろうか。知りたい。
→ とらぶた自習室(5)野口良平『幕末的思考』第一部 第-1
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