民間企業を経験した教員として意識したこと【教科指導編】
民間企業を経験した教員として意識したことについて書きたいと思います。今回は教科指導編です。
民間企業で何を経験したか
新卒で入社した会社(商社)では、以前の記事に書いた通りガスやエネルギーを中心に様々なものを扱っていました。商社を経験したことで、ビジネスの仕組み、モノの流れ(材料の調達)をリアルに感じることができました。また、私が所属していた部署では、最先端の技術を駆使して設備を作っていくという刺激的なプロジェクトを行っており、ついていくのに必死でした(その領域の法整備もできていない状況で、法の認可申請なども少し経験しました)。また、社内だけではなく社外(省庁、県庁、メーカー等)との折衝もたくさん経験させていただきました。その中でたくさんの失敗や苦労もありましたが、本当に貴重な4年間だったと言えます。企業で得られた経験やスキルを簡単にまとめます。
ビジネスの仕組み
モノの流れ
最先端技術
プロジェクトへの参画
折衝スキル
教科書と社会をつなげる
刺激的な4年間だったわけですが、教員に転職しました。理由は過去の投稿を参照ください。
民間企業を経験した教員として、その社会経験を高校生に伝える。これは自分にしかできないことだと感じていました。それはいろいろありですが、まず、教科指導の観点で書きたいと思います。
私の専門は理科(化学)ですが、いわゆる「理科離れ」が叫ばれています。これは今に始まったことではなく、以前から指摘されていることです。現場で最先端技術に触れる中で、高校や大学で学んだことが活きる場面が多々あり、「なるほど、そういうことなのか!」「この技術は面白い!奥が深い!」「技術が普及しないのはこんな課題があるからなのか!」といった経験をすることができました。
教員試験を受ける際、「理想の教師像」というテーマの課題がありました。そのとき、「生徒が理科の楽しさ、面白さ、奥深さを感じされるように、実体験を伴った活動を積極的に行う」といったことを書いた記憶があります。このことを意識しながら、理科の授業をつくってきました。生徒をいかに主体的に、前向きにさせるか、これは理科に限らず全教育活動に共通のことかと思います。
理科離れは、年齢が上がると、つまり小学生の頃は理科が好きでも中学生、高校生になるにつれ、その傾向が強くなるそうです。その要因の一つは、受験や学習内容の多さにより、理科の楽しさに触れる実験や観察、探究活動に使う時間がとれないことだと考えます。その結果、理科は覚えることが多く、計算も難しくてわからなくなり、嫌になってしまいます。
民間企業を経験した教員として、ただ実験や観察をたくさん取り入れるだけでなく、普段の生活や使っているものに対してどのように役に立っているのか、その点はずっと意識してきました。また、教科書にあるような実験だけでなく、企業から実験教材をお借りして授業を行う、といったことも社会を知るうえで大切だと思い、取り入れました。年度末に行ってきた授業アンケートでは、やはり企業の教育プログラムの実験が一番印象に残った、という生徒が多かったです。
教科書に書かれていないことを伝える
また、実験でないいわゆる座学のような授業においても、教科書には書かれていないことも積極的に伝えてきました。例えば話題になっている燃料電池について、現在は教科書にも大きく載っていて、「水素と酸素の化学反応によって電気エネルギーを得ることができるもので、クリーンな発電方法として期待されている」ような記載があり、燃料電池の化学反応式、簡単な仕組みについて学習することになっています。
では、水素や酸素ってどうやって作られるのか?それはクリーンな作り方なのか?電極の白金ってどこにあるの?燃料電池自体はかなり前からあるのになぜ普及していないのか?など生徒に投げかけながら、その背景について解説したりしました。
こういった話は、生徒はとても興味深く聞いてくれます。民間企業で勤務していて、教員を目指す方には、その経験をどんどん伝えてもらいたいなと思います。
最近では、探究学習等で学校と社会をつなげる活動が広まってきていてとても良い傾向だと感じています。子どもたちの教育に力を入れている企業もたくさんあります。どんどん連携して社会を知る、興味をもってもらうことが大切だと思います。
私は一旦は教育から離れますが、これからも何らかの形で教育に関わっていけたらなと思っています。
以上、民間企業を経験を教科指導にどう生かしたかについて紹介しました。次回は進路指導について紹介します。