偽り。
いつからだろうか。本当の自分を隠して人と接してきたのは。
嫌われたくない。自分が犠牲になることでその場が収まればそれでいい。
そんなことを思うようになって嘘をつき、自分を偽り、人を傷つけ。
本当の自分はどこにいるのだろう。
どこでそんな思考になったのだろう。
小さなころから厳格に育てられ、一人っ子とは思えないくらい厳しく育てられ。人の考えること、人の気持ち、空気を読んだ立ち回り、対人コミュニケーション。それなりに汲みながら成長してきたと思う。
人の上に立つこともあった。
学級委員をしたり、キャプテンをしたり。
自分を偽ることで、嘘をつくことで、自分と向き合うことから逃げてきた。
都合の悪いことから目を背け、怒られることを嫌い、
人から嫌われることを避け、自分を正当化してきた。
全てを晒け出せるひとなんて到底いない。
なぜなら自分のしていることに後ろめたさがあるから。
そんな日々を過ごして何が楽しいのだろうか。
ある時、本当に大切にしたいと思う人が現れた。
その人に過去の全てを知られた。女、金、酒。知られたくないこと。
もちろん軽蔑された。過去の自分を憎んだ。なぜそんなことをしたのか。
上っ面だけ良い人なんだと。化けの皮を剝がされた。
自分の生活、姿、過去の自分を見返した。
どれも恥ずかしくて人に話すことのできないようなこと。
それを大切な人に見られたとき、ようやく我に返った。
過去の自分を恥じた。
そんな自分でも受け入れてくれた。受け入れてくれたわけではないのかもしれない。それでも前を向いてくれた。
チャンスをくれた。
変わるなら今しかない。そう思う。
ここで自分を偽ったらおしまい。
一生偽ることになる。
正直に生きたい。その方が断然楽で、豊か。
自ら険しい道を選んでいた。今だからそう思う。
気付かせてくれ、一緒に時間を過ごしてくれる。
そんな人に巡り会えたこと。
こんな情けない自分に、こんなにも良いプレゼントをくれたのは誰だろう。
誰でも良い。ありがとう。
偽りではなく気遣いを。
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