「切り絵で世界旅」天国の門のギベルティ(フェレンツェ/イタリア)洗礼堂の扉に製作者自らの肖像を残す
フィレンチェのサン・ジョバンニ洗礼堂には「天国の門」と呼ばれる扉がある。洗礼堂は8角形をした11〜13世紀の建物であり、ブロンズの扉が3カ所ある。南の扉の製作者はピサーノ、北と東はロレンツォ・ギベルティ。その3つの門の中で、東の扉には10枚のパネルで旧約聖書の物語がレリーフされている。これをミケランジェロが「天国の門」と激賞したことから、すっかり有名になった。
扉を前にして、私の興味を惹いたのは、10枚のパネルの間に、製作者のギベルティが自らの肖像を残していることだ。それも立体的に突き出ていて、かなり目立つ。これなら後世の人もギベルティを忘れることはあるまい。画家がこっそり作品の中に自画像を描き込む手法に近いかもしれない。
ちなみにダンテはここで洗礼を受けており、2016年に公開されたトム・ハンクス主演映画『インフェルノ』の舞台にもなっている。