「切り絵で世界旅」アレクサンドル3世橋(パリ)/ロシア最後の皇帝が寄贈したセーヌ川で一番美しい橋
パリのセーヌ川にかかる橋の中で最も美しいと言われるアレクサンドル3世橋は、フランスの大統領サディー・カルノーと、ロシア皇帝アレクサンドル3世の間に結ばれた友好の証として、その息子であるロシア最後の皇帝、ニコライ2世によって1900年のパリ万博に際して建造され、寄贈されたものだ。
橋の四隅にある17mの柱頭の上には、芸術、農業、闘争、戦争を意味する金の女神像が飾られているほか、37本のアール・ヌーボーの街灯、天使やニンフ、ペガサスの像など華麗な装飾で有名である。切り絵にしたのは、セーヌのニンフ(ギリシア神話で、女の姿をして川や泉辺に出て来る妖精)であり、セーヌ川に敬意を表したものらしい。橋の外側にも手を抜かずに装飾を施す徹底ぶりに感心する。
これほど豪華絢爛たる橋を見たのは初めてであり、絶好の撮影ポイントになっている。筋肉質で挑戦的な女性をモデルにしたスキャンダラスな作品で有名な写真家ヘルムート・ニュートンが、この橋で撮影していたはずだと思っていたが、帰国後、探してもこの橋を背景にした写真を見つけることはできなかった。単なる思い違いだったかもしれない。
それにしてもニコライ2世は、なんと親孝行であることよ。普通なら寄贈した自分の名前を橋につけて、ニコライ2世橋としてもよさそうなのだが‥‥。