『恋人たちの予感』へのアンサームービーな『スイートハーツ』(U-NEXT独占配信)感想文

「男女の間に友情は成立するか」をテーマにしたロマコメ『恋人たちの予感』メグ・ライアンの名シーン"イッたフリ"をオマージュした冒頭シーンから、本作で何をしたいのかわかった。つまり、みんな大好き『恋人たちの予感』の問題点は、結局のところ男女間の友情が成立するのか否か教えてくれていないところだ(考える余地・余白がある点は映画として大正解なのだが)!という問いに対する答えを、時を経てジョーダン・ワイス脚本監督が自分なりの解釈で描ききった本作。…なんて思っていたら劇中で実際に『恋人たちの予感』を見ているシーンあるし、オリジナル版を愛するファンメイドの「私はこう思うんだ!」という解釈をめぐる二次創作的な立ち位置と本作を見るのであれば、ある意味では『ブレードランナー2049』とも近いかも?つまり、「男女の間に友情は成立するか」は「デッカードはレプリカントか」くらい議論するに値する着眼点だということ。

シンプルさと下品さ・バカバカしさの中にも確かな知性を感じさせる語り口が、「コレ見たよ」から灯台下暗しな新鮮さへとロマコメをちょっと更新する!今までごまんと見てきたようなプロットに、ポップさ・オシャレさも汚さも清濁併せ呑んだ気の利いた笑いのセンスと、その真っ直ぐさが映画としては逆に新鮮に見える微かな捻り(着地点オチの付け方)によって、本作はしっかりと製作意義のあるクセのある作品に仕上がっている。『恋人たちの予感』と同じくらいどころか、時にそれよりお下品で際どいところにまで踏み込んだネタで笑いを誘いながら、ちょっとサブくなりかねないところもしっかりと一貫した個性として武器にしてしまう。つまり、若者が性欲に踊らされた猿だってこと。とりわけ若者はそういう間違い -- 性欲や周囲の色々なノイズを恋心・恋愛と錯覚すること -- をしてしまいがちかもしれないから。

ダンスマラソンどこからはじめる?伝染してきたぞ…この恋愛は人生を邪魔してる?思い立ったが吉日な別れ切り出す作戦の果てに、彼らの運命やいかに?振り回されるいい奴ベンと、対照的に攻撃的な自己主張と穿った見方で人を寄せ付けない主人公ジェイミー=魅力的なニコ・ヒラガ(『ブックスマート』から知ったけどいつも裏切らない)とキーナン・シプカの好演と化学反応!しかも、ブロンド美女と(本作中でも言及があるように)クルクルとカーリーした髪の毛という、髪型でも『恋人たちの予感』している。ロマコメと言ったらおなじみ鉄板"ゲイの友人"ポジション(『モダン・ファミリー』キャメロンみたい)に、交際相手はおバカなジョックスとお騒がせクイーンビー(?)。

けど、このゲイの友人パーマーこそ本作の影の主人公である。つまり彼もまた一見するとザ・"いかにも"なゲイで、周囲の家族や友人知人皆気づいているわけだけど、本人は表立ってカミングアウトしていない。また、本作の中で彼にとっての地元ホームタウンとは当初"(自分を受け入れてくれない)保守的な田舎の町"という固定観念そのもの=卒業したら出ていくべきところなわけだが、それだけではない町の一面を彼は知ることになるのだ。それがまた良くて、"ゲイならこうすべきだ"というガチガチな思考が、観客ともども解きほどいてく過程は、これまた一見シンプルながら実にあたたかなものに感じられた。


P.S. ジェイミーが個人的にすごく共感性高かったな。


「これだから酔ったガキと車の必須な田舎は嫌い」ジェット・エイミー


勝手に関連作品『ブックスマート』

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