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心の浄化週間〜Everyday life〜

今日も曇り空が広がっている。
低気圧痛か薬が合わないのか、最近頭痛が酷い。
満員電車で吊り革に捕まりながら、痛みに耐える。前に座ってた人が降りたので座ることができた。
バックからハンドタオルをだして、額の汗を拭う。
ふと、左隣に座っている男性が腕を組み直したのをみて、嫌な記憶が甦った。
もう二十数年前の記憶だ。あのストーカー男の仕草に似ているのだ。
まさかアイツじゃないよね。また見つけられた?
でもあれから引越し3回したし、結婚して名前変わっているし、まさかね。
と、考えていた。顔をみることは怖くてできない。動悸がしてきた。
3駅ほど進んだだろうか、男が立ち上がった。
降りるらしい。
勇気を振り絞って顔を確認した。
彼ではなかった。

執務室に入る前に休憩室に向かった。
今日はお弁当を持ってきたので、冷蔵庫に入れるためだ。
休憩室には2人いた。出勤してから休憩室で朝食を食べる人もいる。
カバンからポケモンの巾着袋に入ったお弁当を冷蔵庫に入れる。巾着袋は息子のを拝借した。
執務室に入り、昨日とは違う席に座った。
パソコンやモニター、備品をロッカーから出してきてセッティングする。
監査資料をロッカーからだしてきた。
前にはSさんが座っている。
「お子さん、最近は元気?」と尋ねると、保育園で手足口病が流行ってるので、いつ感染るかヒヤヒヤしてる、と言う。
働くママの鉄板ネタだ。
「また、コロナも流行ってきてるらしいね。気をつけないとね。」など一言ニ言、言葉を交わし仕事に取り掛かる。

「おはようございます。」横に座ってきたのは昨日端っこにいて声をかけられなかったTさんだ。
「おはようございます。いろいろ迷惑かけてごめんね。」と言った。
「お身体大丈夫ですか。」といたわりの言葉をかけてくれる。私は頷き笑みをかえした。

お昼になった。おのおの休憩室でお弁当を食べたり、外へ出かけたりする。休憩開始時間も自由だ。
私はいつも早め12時少し前にとる。
今日はお弁当だ。小さなおにぎり2つとおかずはチンする唐揚げと、朝焼いた卵焼きとアスパラマヨは朝食の残りだ。
マンゴーゼリーはお歳暮でいただいたもので、ウチの冷蔵庫にたくさん入ってるので、持ってきた。
ゆっくり噛んで食べる。
「軽井沢へ行ったんです。良かったらどうぞ。」とクッキーを配る人がいた。
いただいたクッキーをかじりながら見る休憩室のテレビは、大リーグのスタジアムからの中継だ。
大谷選手の話題に花が咲く。
日常が戻ってきた。

夕方に本社の会議室で産業医との面談がある。
15時半には仕舞って、電車で本社へ向かう。
上司に言われた通りに人事部の人に声をかけた。
「あぁ。」と言って私を見上げた。
「こちらへどうぞ。」と促された会議室の椅子に腰掛けた。
しばらく待たされると、女性が入ってきた。
医師ということで勝手に男性だと思っていた。
同い年くらいだろうか、普通にスーパーに買い物しにきた主婦みたいなニットカーディガンにフレアスカートといういでたちに親近感が涌く。
「ちょっと具合が悪いということですが、ご自分の口で状況をお話ししてくださいますか。」と柔らかい口調で促された。
私はなるべく時系列に簡潔にまとめて、感情抜きに説明した。
「仕事復帰した今はお気持ちに変化ありますか?」
と聞かれたので、
「チームを抜けることになり、申し訳ない気持ちはありますが、ホッとしているのも事実です。」と打ち明けた。
「適応障害は、その原因を取り除けば症状は改善します。お薬もいい方向に作用しているみたいですね。」と薬の話しになったので、
「実は先週から2錠に増やされたんですが、1錠のままで飲んでます。先生に増やしたくない、と言ったんですが、治療に必要な量です、と押し切られたんです。」
「うーん、まぁ、1錠で効いてるなら私は増やさなくていいと思いますよ。ただし、服用を勝手にやめるのは良くないので、1錠しか飲んでないとちゃんとお話しして、問題ないことがわかれば先生もそれでいいかとなると思いますので、ちゃんと病院には行ってくださいね。お薬やめるときは医師と相談しながら慎重にやらないと、逆に鬱に進行してしまうこともあるので注意してくださいね。」
「頭痛が酷くて、いつもならバファリン飲んじゃうんですが、この薬のんでるから我慢してるんです。」と言うと
「酷い痛みなら、バファリン飲んで大丈夫ですよ。」と嬉しい助言をくれた。
最後に、
「お仕事続けることは問題なさそうですので、適応障害の原因となったチームを外れることを条件、と報告しますね。ただ、無理はしないように。
1〜2ヶ月はキツイときは休んだりしながら、ゆるくやってください。」
と、一番言って欲しかった言葉をくれた。
脱輪した車輪がレールの上に乗った気がした。

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#創作大賞2024 #お仕事小説部門

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