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ゴミの城~005~庭やベランダのゴミを処分する

 これまでのお話

 父親が他界して一か月、呆れるほどのゴミをちょこちょこと片付けているのだが、ゴミが家の外にも及んでいる。庭や駐車場、家と塀の50㎝程の隙間にさえ物が置かれている。と言うよりも「ゴミが詰め込まれている」が正しいのだろう。

 基本、家の中はゴミ袋に入る大きさの物が多いが、外となると事情が変わる。厄介な「燃えないゴミ」それも大きな物が多い。プラスチックの大きなタライやスキーの板に壊れた自転車。それに大きな水槽が何個もある。その他にも酒屋でもないのにビールや酒のケース。60㎝くらいある大きな植木鉢や、植物が植えられた発泡スチロールなんかが何個もある。中には土も入っているから重くて動かせやしない。

 もう、ため息しか出てこない。

 狭い庭には、もはや制御が出来なくなった銀杏や栗の木、葡萄の木などが太陽を求め空へ空へと向かっている。二階のベランダにもゴミの山、ベランダから屋根に行けるのだが、そこには実を付けた葡萄の木が一面に広がっている。その下、屋根の上には水槽と発泡スチロールの植物がたくさん……。

二階のベランダから外を見たところ

 片付けているときの様子 ←動画になります

 ほんとに「馬鹿に付ける薬はない」と言うが、父親は馬鹿で馬鹿でどうしようもないとさえ思ってしまう。最近では実家に行っても線香もあげてやらない。

 物を捨てられない方は多いと思うが、知っていてほしい。遺品の整理がどれだけ大変なことなのかを。お金があれば業者を呼んで一発だが、金をかけずに残された物を整理するのは物凄く労力と時間がかかる。家の中に何百個ものゴミ袋が積まれ、家の中で泥が付いた発泡スチロールやプラスチックのカゴを小さく切りゴミ袋に入れていく異常さを。故人に対する想いは怒りや悪意に代わってしまう。

 父親がそうだったせいか、僕は使わない物が家にあるのが嫌いだ。必要最低限の物があればいいと思っている。無駄な物があるとイライラしてしまう。だから余計にゴミ屋敷にはイラついてしまう。

「使う物」か「使わない物」か? 実家にあるのは90%が「使わない物」だ。とりあえず今月は兄に

「台風がきて屋根の上にある水槽や植木鉢なんかが、隣に落ちて隣の屋根を壊したり、誰かに怪我をさせたら何十万とか何百万とか掛かるし、なにより住めなくなるからね!」

 と声をかけて手伝わせ、ベランダと屋根にある物を二人で片付けた。ボウフラだらけの水槽の水を少しずつ捨て屋根からベランダに移し、一階へと何個も運んだ。葉っぱだらけの雨どいも綺麗にした。それでも土の入った発泡スチロールは幾つか残ってしまい「これも降ろさないと駄目だよ」と兄に頼んだのだが「重くて運べない」と言うので「バケツを持ってきて少しずつ土を下ろして運びなよ」と言っておいたのだが、まぁこれは案の定、次に行ったらそのままになっていた。

 それよりも、その日ベランダを片付け、僕が帰り支度をしていると兄がぼそっと言った。

「ベランダの屋根に変な動物がいるんだよ」

「んっ? 猫じゃないの?」

 この辺に、近所の方の猫がふらふらしているのは知っていた。どうやって来たのか二階のベランダに見知らぬ猫がいたこともあったし。

「猫じゃない。頭が白くてとがっている動物。昨日の夜に葡萄を食べていたよ」

「えっ!? あれじゃん。……うそっ、こんな所にいるの? 近くに公園も川も無いし、野良犬だっていないんだよ」

 僕は半信半疑で、とりあえずスマホでその動物を検索して兄に見せた。

「うん、これ」

 兄が平然と答える。まじか、こいつがいるのか……。こんな住宅街にだよ。

 それでも僕は半信半疑だったが兄には、そいつの怖さを教えて「とりあえずベランダの葡萄の実は全部、取って捨てちゃいな」と伝え、実家を後にしたのだが、当然次に行ったらそのままで「もう、ほとんど食べられていてあまり葡萄は成っていなかったから取らなかった」と答える。そこで再度、その動物の怖さを教えた。

「家に住み憑かれたら、糞尿の匂いが物凄いし、コードをかじられたら電気も止まっちゃうし下手したら火事にもなるよ。なにより病気をもっているからヤバいんだよ」と懇々と説明をした。

 そいつは「ハクビシン」という名前だ。兄は

「なんで次から次へとこんなことになるのかな」

 と言った。僕が当たり前のように答える。

「汚くしてるからだよ」

 まったく、困ったものだ。そうじゃなくともゴキブリやネズミが居るというのに。ほんとに嫌になる。

動画をご覧になりたい方は~こちらから

続く ~006~ 恐るべきゴミの王



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