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ゴミの城

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動画~https://youtu.be/YN4iTq7kIF4  父親が他界、実家に残されたのは子供のように振舞う母親と引きこもりの兄、そして大量に残されたゴミの山だった。 登場…
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#実家

ゴミの城〜010~ゴミ屋敷の成り立ちを考える

これまでのお話  父親が「なぜゴミを集めることになったのか」を考えてみた。なにぶん母親は健在なのだが、少し心が不安定なので母から父親のことを聞くことが出来ず、自分で見たことや兄から聞いたことを元に憶測をしてみた。  ゴミと書いたが、本人からしたらそれはゴミではない。部屋にあるあらゆる物を父に見せ、捨てて良いかと尋ねたが、答えは決まってこうだった。 「それは使うんだよ」  僕から見たらゴミでも父から見たら使う物、使える物なのだ。使う物は捨てない。当たり前のことだ。  元々

ゴミの城〜011~後ろの正面だぁーれ

これまでのお話  ゴミを片付けに実家へ行くと、すぐに兄に留守番を頼まれ、玄関の鍵を掛け、更にチェーンも掛けて庭を掃除していた。たまに手を止めて家の中に入り玄関を確認していたのだが、何度目かに家に入ると玄関の方で声がした。 玄関にいたのは家の前に住んでいらっしゃる、おじさんとおばさんでその横に母親が不安そうに立っていた。二人は一人で外に出てきた母を心配して家へ連れ戻してくれたのだ。その方々はうちの事情も知っているし、家の木を切ってもらったりと何かと良くしてもらっていたのでとて

ゴミの城〜012~逃避と笑顔

これまでのお話 日曜日に実家へ行って家の掃除をしていたのだが、先週に引き続き兄が買い物に行く間、留守番をしていた。前回は庭を掃除していて少し目を離した隙に母親に外に出ていかれてしまったので、今回は玄関のチェーンが外れないように鍵をかけておいてから、一階の部屋を掃除していた。 母親を逃さないように。というと人聞きが悪いが、いまの母は一人で外に出ていってしまうと、帰ってこれないという危惧がある。案の定、五分もしないうちに母親が二階から降りてきた。 「お兄ちゃん、買い物に行っ

ゴミの城〜013~モチベーションがだだ下がり

これまでのお話 ここ最近、実家に掃除をしに行くことを躊躇ってしまう。 頭の中で「あそこをこうして……」と考えていたのだが、なかなか考えた通りにはいかない。 外にはゴミに出せない大きさの粗大ゴミが多いし、そもそも「これは、ゴミとして出せるゴミなのか?」という物もある。そうでなくとも虫がいて、何かをどかすとゴキブリやダンゴムシ等がが現れる。それでも伸び切った庭の木を切ったり、燃えるゴミを集めては捨てていたのだが、何よりやる気を無くすキッカケになったのは、 土だ。 もう、土が多い

ゴミの城〜014~あっという間に過ぎていく時間とゆっくりな時間

これまでのお話 久しぶりに文字を書く。実家のゴミ屋敷の掃除をしながら、その模様をYou Tubeで動画をあげたりもしていたのだが、夏の初めに子供がコロナウイルスに罹り自分も罹患してしまい回復後、待機期間を過ぎて、いざ実家へ行こうかと思った矢先に、また別の子供が今度はインフルエンザに罹り、その待機期間を経る前に僕の友達がコロナウイルスに罹り、またその子供が罹りと……。高齢の母親に感染してはマズイと思い、実家には足を運ばなかったのだ。 そのまま心が折れてしまった……。 その

ゴミの城〜018~捨てたがり~物を捨てたくて仕方がない

これまでのお話 父は物を捨てられず実家は「ゴミ屋敷」と化したが、その影響なのか? 自身は不要な物があるのが嫌で嫌でたまらない。 ゴミの日の前日になると捨てられる物を探して極力、ゴミ袋にゴミを入れていく。出かけるときは必ず空のペットボトルや宅配で届いたダンボールなどを持って近所のスーパーにあるリサイクルボックスに立ち寄る。 ここ最近、フリマアプリやリサイクルショップなどで自分の不要な物をかなり売ってしまった。それでも家には他の家族もいるので物は多い。増えていく子供の荷物を

ゴミの城〜020~母との時間

これまでのお話 実家へ行ったときに、ちょうど母親がトイレへ行く所で二階から兄が介抱しながら一緒に降りてきていた。母は足もおぼつかずトイレへ行くのがやっとで、僕は母と兄に「ただいま」と声をかけて母が階段を降りるのを手伝うと奥の部屋へと向かった。以前から母は一人で排泄もできない。兄が手伝っている。 父親の位牌に線香を上げていると、トイレから僕の名前がする。 「○○来ているんでしょ。……こんな姿、○○には見せられない」と母親の涙声が聞こえてきた。 家、全体が排泄物の匂いがして、

ゴミの城〜022~兄と喧嘩

これまでのお話 実家には母親と兄が住んでいる。母は認知症気味で目の焦点も合わず、いつもベットの上で横になっていて、僕が行っても言葉を発することはまずない。兄は中学生の頃から引きこもりで、現在は介護4級となった母親の面倒を診ている。 実家のゴミ屋敷を綺麗にしようと通っていても、いつも「母親が亡くなったら、家は売ることになるのではないか?」と思いながら掃除をしていた。 先週、実家に行ったときに兄に「母親の貯金から、いくらか出して家を直そう」と提案してみた。少しばかり貯金があ

ゴミの城〜023~庭の木

これまでのお話 兄と喧嘩をした翌週、気まずかったが僕から兄にメールで「今日、行きましょうか?」と連絡をしてみた。すぐに兄から「今日は午前中にお母さんと買い物に行ったので大丈夫」と返信があった。とりあえず怒ってはなさそうだし、来週にでも顔を出すことにした。 一週間振りに実家に顔を出すと、玄関先の木の枝が切ってあった。てっきり前の家のおじさんが切ってくれたのかと思い、兄に聞いてみたら「台風が来るから切った」とのこと。兄が木を切るなんて珍しい……。喧嘩をしたときに僕が色々と言っ