前世紀の予見は現実のものになるのか?それとも既になってしまっているのか?
2部構成。
前半・後半に分かれています。
前半、パロディ仕立てですが、随所でチクチクとツボを刺しています。
後半は、『1984』の著者ジョージ・オーウェルのBBCインタビュー。多分最晩年の1940年代末くらいの収録かと思います。貴重な映像です。
印象に残ったのが、はじめの方で出てくる
「この本は『パロディ』であるため、『1984』のようなことは実際に起こり得ます」
とのオーウェルの言。
そして、一番最後に私たち(カメラ)に向かって語った
「それを許すな」
「あなたに掛かっている」
という”遺言”です。
聞いたものは、受け止めなければならない「目」をしていました。
私が印象に残った言葉は、はじめの方に出てくる
「私が思うに、そこには何個かの”非人間的な力”が存在しており、それらは自由の制限を推し進めます」
というハクスリーの回答。
コメント欄には同様の指摘があったから、なるほどと思った。
また
「テクノロジーの進化に意表を突かれないように」
という言葉。
さらに洗脳の脅威について語っているあたりは、暗にMKウルトラを指しているのかと思った。(年代的にも符合する)
なお、途中出てくる「ドローン」は、もちろん今日のそれではなく、「働きバチ」の意味だそう。
それにしても、司会のマイク・ウォレスさん。
いかにもアメリカのジャーナリストらしくてきぱきと小気味いいリードの仕方だが、常に「対ソ」の視点がなんだかアメリカ映画的でした。
因みにオルダス・ハクスリーは、『すばらしい新世界』の著者。
ESPとか超常現象の研究家でもあったらしい。知らなかった。
お二人とも、世界的に有名な文明評論家、作家。
ほぼ同じ年代に活躍し、軌を一にして機械文明や全体主義の脅威、政府やマスコミ、プロパガンダによる洗脳などをテーマにしている。
作品はいずれも近未来のディストピア社会を予見している点で共通項があります。また、「風刺」や「諧謔」精神という点でも似たような性格が見られます。(英国にはあのバーナード・ショー翁のスピリットが流れてるんですかね?)
昨今はこのような上質な「風刺」よりも、ディスったり、茶化したり、こき下ろしたりといった蛮行が流行るようですが、残念過ぎる現実ですね。
ある意味「聖書」や「仏典」ですら、当時の(階級)社会制度や人間への風刺として読むことも可能です。いずれにせよ、その精神はむしろ深い自己批判があってのものだからこそ、鋭い社会、文明批判にまでたどり着くのでしょう。
その辺の対人、対民族への言いがかり・誹謗中傷・罵倒・攻撃などとは、とても悲しくなるくらいレベルが違いすぎます。
「よくぞ恥も外聞もなく(連中は外聞目当てなのに)その口が言えたな?」との報道の全体主義に憤りを感ずるとともに、それを鵜呑みにする精神の蔓延に愕然とするよりも、もはや開いた口がふさがらない昨今です。
お二人が、現代に生きておられたら、ほぼ1世紀近くも前に警鐘を鳴らしていたものが現実になっている姿を見て、何と思うだろう。
東洋哲学に触れて40余年。すべては同じという価値観で、関心の対象が多岐にわたるため「なんだかよくわからない」人。だから「どこにものアナグラムMonikodo」です。現在、いかなる団体にも所属しない「独立個人」の爺さんです。ユーモアとアイロニーは現実とあの世の虹の架け橋。よろしく。