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新鮮で自由な世界は未知の中にこそある
御多分に漏れず、私もそうですが
ひとは何か一つのことにとらわれながら生きているものです
だから、今日は昨日と同じようだし
その考えも、昨日からおおいに進展したと思いながらも
その実、そんなことは自己満に過ぎないと
気づくのにはそれほど時間は要らない
そのことが昨日の延長であり、
昨日もまたそれ以前から引き継いだものだから
それが正しいこと
間違っていること
美しかろうが醜かろうが
あまり問題ではない
一定のパターンで
一定のリズムで
よく見りゃ一本の糸を
縦に横に紡いでいる
一斉に、また機織りが始まる
そんな光景が、ただただどーにも、つまらん
お前の話はつまらん
ちーとも、新しさがない
驚きもせん
(大好きな俳優故・大滝秀治さんの口調で)
なぜなのかというと
それはとりもなおさず
同じようなことを
同じような角度から
同じようにかんがえているから
そういう意味では
芸能人のゴシップばかり追いかけている人と
そうした世俗の生臭さを下に見て
神だの霊魂だの、ハイヤーセルフだの
ときにヒロイックな目線で神聖な(と思っている)世界ばかりを追い求めている人との
両者の間に違いはない
おそらくは、どちらも
昨日
その前
あるいは幼少期のトラウマを引きづって
そうあるのだろうが
もちろん自分でそれを認めることはしない
《自分は特別。他人と違うんだから》
あまり熱心に他人の書いたものを読むことはないのだが
でも、このNoteのサムネくらいは俯瞰する
そこで、まれにそれを開くことがある
そこにはこれはやばいな、くらいに自己崩壊、その叫びをぶちまけるような若い方の声があったりする
切なくも、正直な心情の吐露がある
しかも頭抜けて明晰な文章である
周囲にある同じような退屈なリフレインの中で、そこだけは爆発している
そこでは、過去の繰り返しはなく、過去に牙を向けている
つまり、そこだけ生きている
だいじょうぶかな、とも思う
でも彼は乗り越えるだろう
若さとはそんなものだから
わたしもそうだったから
そもそも過去は終わったもの、死んでいるものだ
昔書いた駄文とか
恥ずかしいポエムとか
痩せた面影のポートレートとか
そんな”遺物”だけではない
ついさきほどまでも過去が覆いこんでいる
継続して同じ考えを突き進める
それはどこまで行っても過去に過ぎない
そんなものが頭をひねって、何ごとか新しいものが生まれる術もない
しかも、歳を重ねるごとにひとはずるくなる
分かったつもりでことに接する
それは分かったのではなく諦めか、傲慢だ
既知の自分の狭い了見が
これはそうなって結局はああなるんだろうと
先読みして、先に回り込んで答えを促す
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そんななか
ひとは世界観も世代もなにもかも異質なものに出会う
その時、だれしもが毒気を抜かれしぼんでしまう
そこでしぼんでしまったのは
またぞろ繰り返そうとする作為であり
おしゃべりでずる賢い過去の自己である
どうしてよいのか分からない
どうしてよいのかわからないから
どうにかしようとする
そこに既知の──過去の経験則に基づく──行動はない
そこからは今新たに始まる未知の世界だ
未知なものとは無垢なものだ
無垢なものに遭遇するとき
はじめてひとは謙虚になり
ほろほろと、わけもなく涙を流したりする
求道とか、探究とか、研鑽とか
一つの道を究める姿
と言えば聞こえはいいが
それは一つのことにとらわれる姿
もしかしてそこに
その行為が何かに資しているという思い込みが無いだろうか
その思いはエゴからのものであるから、
石が玉になる──技術や技芸に磨きをかける──
ことはあっても
けっして新しいものにはならない
それは、過去に散々やりつくされたやり方だ
新しいもの
未知なるもの
無垢なもの
それらが正しいのでも
価値があるのでも
未来を拓くのでもない
今からは未知で
明日は未知で
未来は未知なだけだ
いきなり知らない少女に出くわすように
何の前触れもなく
何の繕う間もなく
段取りもなく
作為もなく
生きていく
新鮮で自由な世界は
未知の中にこそある
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