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【姓と本貫】 「先祖の発祥地+姓」で表す韓国人の姓

自分の先祖って知ってる? 日本で、すべての国民が姓(名字)を名乗るようになったのは、明治時代からとされます。それまでは、公家や武士などの支配階級しか、公では姓を名乗れませんでした。家系図を残す家も限られ、遡れる先祖はせいぜい3、4代前という家もあるかもしれません。

発祥の地を表す本貫

 朝鮮半島では、三国時代に中国の戸籍や姓氏の制度を取り入れ、「金」や「李」などの一文字を基本とする中国式の姓を用いています。同じ姓を持つ父系同族集団を「宗族」と呼びますが、宗族の発祥の地を「本貫」といい、氏と組み合わせて「全州李氏」と表現します。「京都の山田さん」と呼ぶようなものです。日本も飛鳥時代に同様の戸籍や姓氏制度を取り入れましたが、平安以降に廃れてしまい、明治になって復活したのです。

大田のプリ公園には「本貫と姓」の由来を記した石碑が並ぶ

 韓国で最も多い姓は「金」で、国民のおよそ2割(約1千万人)を占めます。そのうち最多が金海金氏(約410万人)、次が慶州金氏(約170万人)、3番目が光山金氏です(約83万人、いずれも2013年調べ)。日本で最も多いとされる「佐藤」でも約186万人(2021年リクスタ調べ)ですから、いかに同姓が多いかが分かりますね。

김석진、민윤기、김남준、정호석、박지민、김태형、전정국はBTSのメンバー名ですが、見ての通り、7人のうち3人が金氏です。

しかも김석진(JIN)と김태형(V)は同じ광산김씨(光山金氏)。2人は始祖を共有する、強いていえば遠い親戚の間柄なのです(遠すぎるので、親戚と呼ぶには語弊があります)。

 こうした自分の本貫を、韓国で知らない人はいません。一つの宗族だけで数が膨大ですから、各派に分かれています。宗族各派は、始祖から始まる男系を代々記録した「族譜」と呼ばれる書物を発行しています。この書物は現在も引き継がれており、没年や出生者情報を付け加え、数十年ごとに改訂されています。近年急速に廃れつつあるものの、宗族の集まりもあります。

プロフィールにも本貫が掲載されている


古い時代に作られた族譜。現代版は書籍の体裁がとられている

同世代で同じ字を共有する行列字

 親から子、孫へと、同じ漢字を引き継いだ名前をつけることがありますね。これと似ていますが、中国や韓国には、一族の同世代で同じ字を共有する「行列字名」という文化があります。

 BTSのRM・김남준(金南俊)と俳優の김남길(金南佶)はいずれも강릉김씨(江陵金氏)で、名前に「南」がついています。これは、강릉김씨の39代目は、名前に南を用いると決まっているから。行列字を使って名前をつけることで、名前を見ただけで本貫や何代目かが分かるようになっているのです。ただ最近は、行列名を用いない名付けも多く見られます。

密陽朴氏の有名人

 先祖を同じくする集団をまるごと親戚と捉えるため、90年代まで、中国や韓国では同姓同本(姓と本貫が同じ)間の結婚が法律で禁じられていました。今は可能ですが、世代によってはいまだに後ろめたい感覚が続いているようです。

 族譜を持つことは、立派な先祖がいることの証でもありました。そこで、朝鮮末期以降に族譜を偽造するケースもあったようです。同姓同本であっても、生物学的に血縁関係があるかについてはまゆつばものかもしれません。


プリ祝祭の様子(環境日報より)

大田では毎年プリ祝祭が開催されています。プリは根っこという意味で、ルーツ、血縁・血統を意味しています。この祝祭のメインイベントは何と言っても同姓同本ごとのパレードです。宗族が代表団を送り出すのですが、裕福であったり子孫の数が多いと豪華で、そうでない場合はそれなりか、参加していないこともあります。プリ(ルーツ)を大事にする韓国ならではのお祭りです。

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