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最後のTight Hug

かねてから真剣交際しているという噂があり、同時期に東京から脱出してどこかに移住するっていう一部週刊誌報道についてSNS上で騒がれているツマブキサトシさんとイクタエリカちゃんが我が家を訪ねてきた。

一通りの世間話が終わったあと、あらためて座り直し姿勢を正したいくちゃんに「結婚します」って突然言われたわたしは、少し驚きつつも「おめでとう。噂は本当だったんだね」ってにっこり笑った。いくちゃんの隣に座ったツマブキさんがキリッとした表情で「どうもありがとうございます」って言いながら頭を下げた。

「そうか。いくちゃん、結婚するんだ」

その後、急遽決まった結婚前祝いの夕食の食材を買い出しにツマブキさんと妻は出かけたため、部屋の中はわたしといくちゃんの二人きりになった。

「ねえ、この話をnoteに書いたりしちゃダメだよね」
「当たり前じゃないですか 笑」

そんな他愛もない話、そして今では微笑ましいと思えるようになった思い出話が続くなか、ふと会話が途切れた隙間でいくちゃんは言った。

「わたしたちが結婚するって言った時、寂しそうな顔をしてたね」

「いや、そんなことないよ」と否定するわたしに対して「ううん、ほんの少しだけ寂しそうな顔してた」とまっすぐにわたしの目を見つめながら言う。

わたしは話題を変えようと「最近、髪色が明るいね」って言うと、「明るい髪色が好きだって言ってたでしょう」といたずらっぽく笑ういくちゃん。

ああ、なんだこれ。どういう状況なんだって混乱していると、目が覚めた。

前の日に妻とドライブをしている時、「最後のTight Hug」が流れてきて「久しぶりに聴いたな」って思ったからこんな夢を見たのかもしれない。

もうすこし夢の中にいたかったかなと、ちょっとだけ思ったりしながら寝返りを繰り返すうちにいつの間にかまた眠ってしまい、次に目覚めたときには窓から差し込む明るい朝日とともに部屋には日常があった。


作者注)
この物語はあくまで私がみた夢の話を元にひねり出した妄想なので、名前がいくら似ていても、あるいは同じでも、実在の人物その他との関係性は一切ありません。ヒャクパーありません。10万光年ありませんので。


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